甲長 5mm(若齢個体)
私がダイビングを始めた頃は極めてマイナーな存在だったエビやカニたちが、20世紀終盤になって一躍スターダムにのし上がってきた。
もともと甲殻類が大好きだった私としては、得られる情報が増えたこともあって、ありがたい世の中の移り変わりだった。
そして甲殻類のなかでもエビやカニの人気が先行していた今世紀初頭に、全国に名が轟くガイドさんや気鋭の研究者たちが一念発起し、この際ヤドカリたちもメジャーの舞台に登らせよう!という一大ムーブメントが起こった。
そして当時はまだ数少ないエビカニ系のサイトだった旧版「エビカニ倶楽部」を発信していた私にもお声が掛かり、畏れ多いことに、あれやこれやのヤドカリ情報を共有しようというお誘いを受けた。
とはいえ世の中ではADSLが当たり前、そろそろ光だなんだと高速ブロードバンド化が進んでいる一方、水納島は依然最善策でISDNというまったくの通信未開地域。
もちろんのことブロードバンド環境に準じたサイズの画像を添付したメールのやり取りを頻繁に行える環境ではまったくなく、一斉配信される画像添付メールをたびたび受信しなければならない状況は、本業の連絡業務に多大な影響を及ぼすことを知るに至る。
というわけで、通信環境未開地域という理由でやむをえず、日本が誇るヤドカリ最新情報発信集団からあえなく離脱。
ま、たとえ当方がブロードバンド環境だったとしても、結局のところ私はモノの役にも立っていなかっただろうけど…。
あえなく離脱はしたものの、世の中でヤドカリムーブメントが起きていることは知り得たので、それまでにも増してヤドカリサーチに精を出すようになってしばらく経った2012年秋のこと。
半トンネルが長く続くリーフ際の浅いところで、5種類ほどのヤドカリを撮った一連の写真のなかに、(個人的に)未知のヤドカリも含まれていた。
未知のわりには3枚しか撮っていないのは、ひょっとすると撮っていた最中は既知の種類だと思い込んでいたのかもしれない…。
いずれにしろ当時では種類を確かめるすべがなく、そのまま長らく放置していたのだけど、今回新版エビカニ倶楽部にアップするに際して調べ直してみたところ、図鑑「ヤドカリ」にしっかり載っていた。
どうやらこのヤドカリは、グアムサンゴヤドカリの若齢個体のようだ。
歩脚はライムのような色味がつき、ハサミ脚はさらに濃く黒帯模様も出てくるオトナとは違い、若い頃は真っ白けで、足首(指節の付け根)付近にアンクレットのように黒帯模様があるのみ。
この黒いアンクレットが、グアムサンゴヤドカリと他のサンゴヤドカリ系の若い個体(特にウスイロサンゴヤドカリ)とを見分ける重要チェックポイントなのだそうな。
ちなみに背中も白い。
図鑑やネット上で見られるグアムサンゴヤドカリの若い個体の写真は、すでにハサミ脚の二の腕(腕節)に黒帯模様が出ているものばかり。
ハサミ脚がすべて純白な激チビ画像は、なにげに珍しいのかも?(違う種類だったりして…)