エビカニ倶楽部

ヒメソバガラガニ

甲幅 5mm

 花粉症、アトピー、etc.……

 アレルギー体質ではない人のほうが少数派なのでは?と思うくらいに、現代人類は様々なものに拒否反応を起こすようになっている。

 そんなアレルギーのひとつに、蕎麦アレルギーなるものがある、というのを知ったのは水納島に越してきてからのことだった。

 教えてくださったゲストそのヒトがまさに蕎麦アレルギーなのだ。

 蕎麦粉系のものを口にすると、たちどころに口、のどがめちゃめちゃ痒くなるそうで、ひどい場合には各所が腫れることにより気管が圧迫され、呼吸困難から死に至ることもあるという。

 経口系のアレルギーは生命にかかわるのだ。

 生命にかかわるほどにはいたらずとも、枕の中身の素材が蕎麦殻だったりすると、それだけでアレルギー反応が出るというからやっかいなことこのうえない。

 ヒメソバガラガニは本家ソバガラガニに比べると「蕎麦殻に似ている度」では劣るものの、いずれにせよ名前に「蕎麦殻」が入っているわけだから、ヘタをするとこのカニの名前を目にしたたり耳にしたりするだけで、喉の奥が痒くなる方がいらっしゃるのかもしれない。

 図鑑では見知っていたものの、伊豆など本州の海でしか見られないものとばかり思っていたヒメソバガラガニと初めて出会ったのは、我が家の庭でのことだった。

 とあるオフシーズンの春先、散歩で干潮時の海岸を巡りつつ、潮が引いているものだから潮間帯で死サンゴ石をひっくり返していただんなが発見し、水面越しに撮影したあと、見たことのないカニがいたと色めきたって家まで持ち帰ってきたのだ(後刻元に戻した)。

 温帯域限定種だとばかり思っていたものだから調べてみたところ、サンゴ礁域でもフツーに観られるそうな。

 まさか沖縄にも普通にいたとは知らなんだ…。

 なんだか沖縄の食堂でソバを注文したら、日本ソバが出てきてしまったような驚きだ。

 冒頭の写真は見つけた時にだんなが水面越しに撮ったものだから、被写体は水中にあっても「水中写真」ではなかったりする。

 現在までのところヒメソバガラガニとの出会いはこの時のみだから、是非一度実際に「水中」で会ってみたい。

 ソバガラガニもダイビング中に会えたし、ヒメソバガラガニもけっして潮間帯限定クリーチャーではないようだから、きっとダイビング中にもチャンスはあるはず。