エビカニ倶楽部

ソバガラガニ

甲幅 5mm

 ヒメソバガラガニ発見から8年後に、ようやく本家ソバガラガニと出会うことができた。

 ヒメ…に続き、またしてもだんなが、だけど。

 2人ともそれぞれゲストをご案内中のことだったもののフリータイムの時間帯で、個数限定で石をめくっていたときに出てきたものという。

 このようなクリーチャーを見て目の色を変えるようなタイプのゲストでもなかったから、発見後真っ先に私のところへこのカニを持ってきただんなの目は「新種に間違いなし!」と輝いていた。

 しかしそのカニが既知のソバガラガニであることは疑うべくもなかった。

 スレートにすぐさまその名を書くと、既知であることを知りガックリ項垂れるだんな。誰もが何度も経験する「初見=新種・思い込みの法則」である。

 さてこのソバガラガニ、蕎麦殻のような▲の甲羅は5mmに満たないほどで、めくった石についていたこのカニが自由落下する際には…

 数学的な形状になりつつも、パッと見は千切れた枯葉か枯れ枝のようにも感じられる状態で固まったまま。

 これを観た瞬間はいったいなんだかわからなかったそうだけど、着底した途端「シャキーンッ!」という音が聞こえてきそうなほどの素早さでたちまちその形態を変えたという。

 予想外に宇宙生物的形態のカニだったので驚いたらしい。

 甲羅が蕎麦の殻に似ているからこの名があるのであろうことは想像に難くないソバガラガニ。

 でもだんなによると、手足が折りたたまれている状態から手足全開可動状態へのチェンジの仕方などを観ていたら、とても蕎麦の殻などイメージできず、むしろタダモノではないハイポテンシャルなマシーンを想起させるという。

 あいにくこのときは2人ともガイド中のため私が手からぶら下げているゲスト撮影用低性能コンデジしかなかったので、せっかくのファーストコンタクトなのにかろうじて証拠写真しか残すことができなかった。

 しかしその翌年(2016年)7月、マクロレンズ装備のデジイチを携えているときにチャンスが訪れた!

 ん?

 なんか変…。

 あ…脚の数が足りないんだ。

 石の下もけっして完全無欠の安全地帯というわけではないから、きっとナニモノかに襲われたのだろう。

 脚の数が足りないと防御姿勢はとりづらいのか、健気に戦闘態勢をとるソバガラガニだった。