体長 15mm
ウミシダシスターズの稿で触れているように、かつての水納島の砂地のポイントには、今では考えられないくらいに色とりどりのウミシダ(ハナウミシダとリュウキュウウミシダがメイン)をそこらじゅうで観ることができた。
このホソウミシダヤドリエビは、春から夏にかけての時期なら、当時の海ではどのウミシダにも…といっても過言ではないほど数多く観られ、多い時にはひとつのウミシダに20匹くらいついていることもあった。
それなのに。
当時世に出ていた図鑑のどこを見ても、このエビの姿が見当たらない。
なにしろエビカニ変態社会待望の「海の甲殻類」にも、名前はおろか写真すら掲載されていないくらい。
そのため当時このエビは、私としてはもう「ウミシダのナゾエビ」とするほかなかった。
フツーにホソウミシダヤドリエビとして図鑑に載っている今じゃ考えられないだろうけれど、とにかく不思議なエビだったのである。
さて、ホソウミシダヤドリエビは、その名のとおり細長く、透明感があるボディをしている。
基本透明系ながらこのエビもまた宿主によって模様の色味が変わり、冒頭の写真のほかに、↓こういう色合いのものたちが観られる。
横から観ると細く見えるライン模様は、上から見るとけっこう幅広い。
横から観ても上から観ても目立たないハサミは、体の大小にかかわらず、慎ましやかなサイズで統一されているようだ。
長年ナゾだったエビも今ではすっかり正体が明らかとなり、安心して観察&撮影していられるようになった……
…はずだったのだけど、砂地のポイントからウミシダたちがすっかり姿を消してしまった今、ひとつのウミシダに20匹くらい…なんてことは夢のまた夢で、彼らに会うためには岩場のポイントまで行かなければならない。
ところが、岩場のポイントにウミシダがどれほどたくさんいても、かつて観たような、触手のそこかしこからこのエビがピンピンッと跳ねる様子など、まったくもってレアケースになってしまっている。
かつて図鑑に載っていなかった事情が、ここにきてわかるようになってしまったのだった。
当時の水納島が異常個体数だったのだろうか?