体長 10mm
今年(2022年)は晩秋から師走にかけてボートを長期入院させているため、海日和にリーフ内を潜る機会が多くなっている。
エントリーできる場所(浅いところで写真を撮っていられる場所)は風向きや海況によって日々異なるのだけど、重い器材を背負いカメラをもってテケテケ歩いていくとなると、普段ボートダイビングに慣れ親しんでいるだけに、桟橋脇からが最も楽チン。
たかが桟橋脇、されど桟橋脇、他の稿でもときおり紹介しているように、なにげに侮れない出会いがある場所でもある。
冒頭の写真のエビも、桟橋脇、それも波打ち際からほど近いところで出会ったものだ。
藻場というには程遠いショボさでタカノハヅタが生えている場所があったので、何かおりはせぬか…とサーチしてみたところ、タカノハヅタの羽のような葉にピト…とついているのを見つけた。
もっとも、こうしてクローズアップすれば多少エビっぽく見えても、クラシカルアイの肉眼では「ん?何か動いたぞ…」くらいにしか認識できなかったのは言うまでもない。
マクロレンズのファインダー越しに覗き、かろうじてエビっぽいことがわかった。
ちょうど近くを通りかかっただんなに教えたところ、ファインダー越しに覗いても頭の上に「?」マークが7個くらい並んでいたのが笑えた。
いわく、エビにしてはツノ(額角)が突き出てないからヨコエビか何かかと思った、とのこと。
1cmほどと小さいうえに鼻面(?)が丸まっていると、クラシカルアイで見ればたしかにそっち系のクリーチャーに見えなくもない。
でも拡大して見るその姿は、どう見てもエビ。
エビであることは間違いないにしても、はて、これは誰だろう?
後刻さっそく調べてみたところ、どうやらこれはコブタヒラツノモエビという種類っぽい。
近縁のヒラツノモエビに比べ、鼻面(額角)あたりが寸詰まりでブタっぽい、ということなのだろうか?
子豚に見えるかどうかはともかく、エビやカニにもウミウシのような女子ウケネームが必要だと思った方がいたのだろう…。
「サンゴ礁のエビハンドブック」によるとこのコブタちゃんは、ヒラツノモエビと同じくタカノハヅタなど砂底を這うように蔓延る海藻系やアマモ類で観られるのだそうな。
図鑑に掲載されている写真は西表で撮影されたもので、説明では「日本では琉球列島に分布」と述べられているのだけれど、現在ネット上で見られるコブタちゃんの写真は、伊豆あたりで撮影されているものが圧倒的に多い。
推測するに、変態社会御用達のこの図鑑が刊行されて以来、温帯域の変態さんたちが目の色を変えてサーチし始めた成果に違いない。
あいにく恒常的に存在し続ける藻場が無い水納島なので、このテのエビたちに出会う機会はかなり少ないから、久しぶりにモエビ系の新顔に出会うことができ、なんだかうれしい師走の午後なのだった。