甲幅 15mm (写真は10mmほど)
サンゴガニの仲間たちは比較的美しいものが多いというのに、クロサンゴガニはそのシンプルな名前のとおり、見事に黒い。
実際に光をあてて見れば単なる黒というわけではなく、深みのある色をしているし、ハサミ脚の裏側はなにげに網目模様がうっすら見え、ハサミを含めた脚先はほのかにオレンジ色でそれなりに美しい子もいるのだけれど…
なにせサンゴの枝間の奥にいることが多いから、暗いところにいると肉眼では黒にしか見えない。
そのため、美麗なサンゴガ二の仲間たちのなかにあって、最も注目されない種類といっていい(※個人の感想です)。
水納島の場合、クロサンゴガニはハナヤサイサンゴやヘラジカハナヤサイサンゴに住んでおり、わりと個体数は多い。
ところがなにぶん地味なものだから、ダイバーのまなざしは同じサンゴに住んでいるオオアカホシサンゴガニやアミメサンゴガニのほうへ向けられてしまう。
これでクロサンゴガニが枝の先っちょにいて観やすいということならまだしも、他のサンゴガニたちと同じような場所にいて観づらい撮りづらいことのほうが多いのだから、そりゃスルーされても仕方がない。
ここはひとつかっこよく撮ってあげよう…と思って何度も挑戦するのだけれど、全身を拝むチャンスにはなかなか恵まれず、いずれにせよただの黒いカニになってしまうのだった。
ところで、クロサンゴガニも甲幅15mm~20mmくらいにまで大きくなるらしいのだけど、不思議なことに水納島で観られるクロサンゴガニは、まだ若い個体なのか、甲幅10mmほどの小柄なものばかり。
そのため昔は「クロサンゴガニは小さなサンゴガニ」と思い込んでいた。
水納島ではクロサンゴガニは後発組で、サンゴ群体の中で他のサンゴガニの仲間たちに虐げられているからだろうか。
ひょっとして、大きな個体は黒すぎて見えないだけとか?
クロサンゴガニはけっして珍しくはないというのに、立派に育った大きな個体を観たことがないというのもなんだかクヤシイ。
大きなクロサンゴガニ、略して大黒サンゴガニを探してみることにしよう。
でも、ペアで暮らしていることが多いクロサンゴガニたちも、総じてサイズは小さめだ。
ペアでいるってことは性成熟的にオトナであるはずだから、やはり水納島で観られるオトナは他に比べて小ぶりってことなんだろうか?
オオアカホシサンゴガニが暮らしていないヘラジカハナヤサイサンゴにいるクロサンゴガニだけが、大きくなれる条件を揃えている…とか?
※追記(2022年5月)
リーフエッジでサンゴの上を通りかかった際、健気にもサンゴの枝間からこちらを威嚇して両のハサミ脚を振りかざしているクロサンゴガニの姿が見えた。
覗きやすそうな枝間だったので、失礼してパシャ。
慧眼なる皆さまにおかれてはすぐさまお気づきになられたことだろう、撮った写真を見てみると、甲羅の上部と下部が分かれている。
それってつまり…?
この状態で、今度はまるで往年の大関琴風のがぶり寄りのような動きを始めた。
カニさんのこの動きって、お腹で孵化した幼生を外に放出する動きなんじゃなかったっけ?
上の写真はがぶり寄り動きをする前に撮っていたもので、お腹の部分を拡大してみると…
卵のようなものが見える。
その後またジッと動かなくなった…ように見えていたのだけど、撮っていた写真は異なるシーンを写していた。
↑最初から分かれていた上下の甲羅がさらに広がり…
↓もっと広がる。
すると突然…
…目の前のカニさんが2匹になった!
脱皮中だったのだ!(手前の目が虚ろなヤツが脱皮殻)
撮っている間は何も気がついていなかったものだから、まるで手品のようだった。
脱皮なんて、空にキラキラお星さま、みんなスヤスヤ眠る頃にやっているのかと思いきや、まさかこんな明るいうちにホイホイやっているとは…。
そして脱皮が終了した途端、それまでどこにいたのやら、もう1匹がスルスルスル…と現れた。
メスが脱皮を終えるのをジッと待っていて、終わった瞬間登場。
サンゴガニ類も脱皮直後交接派なのだろうか。
だとすれば、オスはメスが脱皮を終えるまで、居ても立ってもいられなかったに違いない。
ところで、さきほどの卵のように見えたもの、あれはいったい?
卵に見えてもやはり幼生で、脱皮直前に放出したってことなんだろうか。
これらのことが私のシロウト考えどおりだとしたら、
子育て終了、いきなり脱皮、すぐさま交接…
メス忙しすぎ。