(Trichopagurus macrochela
甲長 5mm
小さなヤドカリには滅多にカメラを向けることはないだんなながら、石の下に潜むエビカニに盛り上がっていたひところは、石の下から出てくる小さなヤドカリも撮っていたらしい。
冒頭の写真のヤドカリさんもそのひとつで、明るい砂底にいるのは、石の下の平穏を破られたためと思われる。
それにしてもこのヤドカリ、なんとも可愛いお目目だこと。
往年の名作少女漫画ですら、瞳にこれほどまで星が散りばめられてはいなかったかも。
この眼やナリを見て、ヒメホンヤドカリ属の誰かだろうと見当をつけて調べてみた。
ところが、ヒメホンヤドカリ属にも似たような眼をしているものが何種類かいるものの、ビンゴ!にはいたらない。
はてさて…ひょっとしていまだ誰も知らないヤドカリさんとか?
しかし昔ならいざ知らず、今の変態社会帝国下のこの世界では、「誰も知らないヤドカリ」なんてものは変態を極めているヒトたちだけのものだから、そうは問屋が卸さない。
実はヒメホンヤドカリ属というのはまったくの見当違いで、このヤドカリさんはヤワクダヤドカリ属の一員だったのだ。
まだ和名は無いようながら、2005年にアカデミズム変態社会デビューをはたした Trichopagurus macrochela という名のヤドカリと思われる。
ヤワクダヤドカリ同様ハサミ脚はたいそう長いようなのだけど、ジッとしているときはハサミ脚を内側に引っ込ませるのがスタンダードポジションなのか、背伸びポーズ(?)をしていてもハサミ脚の先まで見せてくれない。
ネット上でこの種類の画像をいろいろ拝見したところでは、やはり無駄なまでに長く立派なハサミ脚を自慢げに見せびらかしているものもいた。
このテのヤドカリがハサミ脚を見せびらかす(?)のは、どういうときなんだろう?
いずれにせよ遭遇するには石をめくらなければならないようなので、石の下の環境保護協会としては、立派なハサミ脚どころか、本体に出会う機会すら訪れそうにないのだった。