体長 7cm
世の中には妙な特技を持つ人がけっこういる。
耳を意識的に動かすことができるとか、手首をグニャグニャに曲げることができるとか。
スプーン曲げの超能力と同様、ほとんどの場合、社会的になんの役にも立たないことが多いけど。
いつだったか飲み会の席で、親指をのぞいた4本の指をどのくらい後方に反らせることができるか、ということで盛り上がったとき、自分の指がまったくの頑固者であり、直立不動に近いままであるのにショックを受けたことがある。
社会的にどうであれ、できないよりはできたほうがいい…。
エビの仲間にもちょっとした特技を持つものがいる。
サラサエビの仲間たちだ。
エビ類には、目の上あたりからつんと突き出た「額角」と呼ばれる部分がある。
あらゆるエビにある体のパーツなので、その形や大きさの違いによって種類を決定することもある。
この額角、ほとんどのエビでは動かすことができないというのに、サラサエビの仲間はこの額角を関節によって動かすことができるらしいのだ。
特にサラサエビの仲間の中でも大型のオオサンゴサラサエビの額角はハッキリとした赤白模様で、しかも上方にピンと反り返っていてカッコイイ。
もしこれを上下にさかんに動かしつつ迫ってこられたら、小型のエビ類などは「どーぞお通り下さい」と思わず道を譲ってしまうことだろう。
というものの、いまだにオオサンゴサラサエビがこの額角を動かしているところは見たことがない。
というか、オオサンゴサラサエビに出会ったことが1度しかないかも…。
彼らもまた夜にしか活動しないため、いつの頃からか「夜はビールタイム」と決め込んでいる私には、なかなか出会いのチャンスはないのだった。
エンヤサラサエビといい、オオサンゴサラサエビといい、出会うためにはビールなど飲んでいる場合ではない?