(Paraxiopsis majuro)
体長 6cm
ひところはエビエビカニカニ…眼になって、他の生き物の迷惑を顧みることなくエビカニサーチに明け暮れていた私も、エビカニ系がダイビングにおける一大ジャンルになってエビカニ人口(?)が激増するとともに、他の生き物の負担について考えるようになった。
そのためいつの頃からか、石をめくったり刺胞動物をいじくり倒してエビカニを探す、ということをしなくなったので、人知れずひっそり暮らしている系のエビカニさんたちと出会う機会は、昔に比べてグンと減ってしまった。
一方だんなは、他の稿でも触れたようにクラシカルアイになって見えなくなってしまう前に…とばかり、2013年から2014年くらいにかけて、石の下のエビカニサーチをマイブームにしていた。
ただしやりすぎてしまうと石の下で平和に暮らしている他の生き物たちに多大な迷惑をかけることになるから、1本のダイビングにつきめくる石は5個まで、と制限を設けていたようだ。
2013年の梅雨時のこと、ポイントをひととおり巡った後、例によってリーフ際の死サンゴゴロゴロゾーンで石をめくっていただんなは、めくる石3個目で、↓このようなクリーチャーに出会った。
一瞬新手のテッポウエビの仲間かと思ったそうな。
でも鋏の形状はまったくテッポウエビではないし、逃げ方ものんびりしたもので、なんだか別の仲間のようだぞ、ということに気がついたらしい。
冷静に見てみると、そのフォルムはテッポウエビというよりもアナエビ系に似ている。
ちなみに、それまでアナジャコ下目にまとめられていたグループから、「アナエビ下目」というグループが2009年くらいに分離独立したので、トゲアナエビの仲間たちを総称したい場合、「アナエビの仲間」といったほうが現在は通りがいい。
トゲアナエビの下半身は未見だから、この時のだんなはトゲアナエビの仲間だとは思わなかったそうながら、このエビは、危機感を感じているようにはとても見えないのんびりした歩みをしつつ、他の石の下の隙間の様子をうかがっていたという。
このまま石の下に隠れてしまえば、だんなは「見慣れないエビっぽいものを見た…」で終わっていたかもしれない。
しかし見せ場はこのあとに待っていた。
死サンゴ石に寄り添いながら歩んでいるときは、先ほどの写真のような普通のエビっぽい姿勢をとっているのだけれど、ポッとだだっ広いところに放り出されると……
おお、サソリだ!!(冒頭の写真です)
たちまちだんなは目の色を変え、勝手にスコーピオン・キングと名付けてこのキメポーズを撮ったのだった。
さっそくそれを当サイト「徒然海月日記」で謎のスコーピオンとして伝えただんなは、世界のM下さんからこのエビの正体をご教示をいただく機会を得た(無理矢理お願いしたとも言う)。
それによると、まだ和名が無い Paraxiopsis majuro というアナエビの仲間のようだ。
最近和名がつけられたっぽいヘンゲアナエビ(Axiopsis serratifrons)も似たようなポーズをとるから、色が違うだけで同じ種類なのかと思いきや、スコーピオン・キングとは明確に別種とされている…というか、そもそも属も違っている。
アナエビの仲間といいつつ、トゲアナエビのように垂直ホールを作るのかどうかは不明だ。
石の下にいるくらいだから、アナエビというよりイシノシタエビのような気もするけど…。