甲長 10mm
シタンサンゴヤドカリという和名がついたのはつい最近のこと(2020年)だそうだから、日本ではレアものということだろうか。
少なくとも水納島では「珍」で、これまで出会ったのは2014年6月に撮ったこの1個体のみ。
1個体のみでこのヤドカリがどういうところにいるなどと普遍的な話はできるはずもないのだけれど、ともかくも冒頭の写真の子は、他の多くのサンゴヤドカリの仲間と同じように、浅く明るいところで昼間からチロチロしていた。
ただし上の写真は、ベニサンゴヤドカリの稿でも触れたように「ありのまま」だと手脚の一部しか見えないから、ヤドカリの場合にのみ己に許可を与えているヤラセを施した状態。
やはり個体数が少ないから警戒心が強いのだろうか、フツーならすぐに身を乗り出して再び歩き始めるところ、この状態のまま固まっていた…。
ヤドカリさんには詫びつつ、その機会にじっくり撮らせてもらったところ、脛のあたり(前節)が白いところからしてこの個体はまだ若齢であることがわかる(成長すると白い部分は爪先だけになるそうな)。
ちなみに和名のシタンとは紫檀のことだそうで、家具や仏壇に利用される高級木材としても知られる樹木の色になぞらえたのだろう。
西洋社会ではローズウッドなどとも呼ばれる(バラの香りがするらしい)樹木「紫檀」なんて、知っているヒトは知っていても、そう馴染み深いものでもないいわばウンチク系。
そんな言葉を和名に冠するあたり、おそらく記載論文著者は、酒席では誰彼かまわず蘊蓄を語り続けるタイプのヒトとお見受けした(※個人の勝手な推測です)。
厳かに紫檀と言われても肉眼ではフツーに茶色にしか見えないこのヤドカリの手脚の色よりも、個人的に注目すべきはそのお目目。
眼柄が眼の直前部分だけ白いおかげで…
やたらとカワイイ♪
これはオトナになると随分イメージが変わってしまうのだろうか。
ところで、和名がつく以前は学名のカタカナ表記で通されていたのだけど、その学名はCalcinus hazletti。
種小名をカタカナ表記にすると、「ハズレッティ」となる。
こんなにカワイイ眼をしているというのに、なんだか宝くじを買った後にはお近づきになりたくないような…。
立派な和名がついてよかったね。