甲長 10mm
撮った本人(私のことです)は出会ったことも撮ったことも完全に忘れていても、私が過去に撮った写真の海に潜り込んでいろいろだんなが発見してくれるおかげで、ハードディスクの海の底から再浮上してくる生き物がわりといる。
このツノヤドカリ属の1種もそのひとつ。
眼も触角もブルーで美しく、ビジュアル的にも素敵な小さなヤドカリさんだ。
だんながサルベージをした画像を見て朧げに思い出せたのは、撮った場所は砂地のポイントの水深27mあたりだったってことだけだった。
当時の私はまったく気がついていなかったらしいのだけど、画像を見つけただんなはこのヤドカリさんのとある部分にたいそう驚いていた。
まるでカンザシヤドカリのような触角をしているのだ。
このような触角をしているヤドカリが、カンザシヤドカリ以外にもいたなんて!
…と驚いたらしい。
こんなヤドカリなど、世間の誰も知らないに違いない…と色めき立って図鑑を調べただんなは、それが図鑑に載っているヤドカリさんで、しかも同じような触角を持つ「ツノヤドカリ属」というグループがいることを知ったのだった。
ただしこのツノヤドカリ属の1種はまだ学名すらないらしく、通り名も何も無いから「ツノヤドカリ属の1種」と呼ぶ以外にないんだけど、それだとどうも堅苦しい。
そこでこの稿では、青い瞳にちなんでここではブルーアイで通す。
で、そのブルーアイ、なにしろ撮った本人に場所以外の記憶が無いからどうしようもないものの、当時撮影した一連の写真を見てみると、普段はどうやら貝殻部分を砂に潜らせ…
そこから手足と顔だけ出して、このカンザシタイプの触角を振り回しているっぽい。
カンザシヤドカリと同じく、こうして海中に漂う何かを触角でゲットしているのだろうか。
冒頭の写真はこのあと撮影したもので、貝殻まで外に出ているのはブルーアイが能動的に砂中から出てきたのか、それともホントにこれがヤドカリなのか確かめたくなった私がヤラセをして掘り出したからなのか…。
能動的に出てきたような記憶がモヤモヤ~とあるんだけど、撮っていたことすら忘れていた私が確信をもって言えるはずはない。
触角の様子も色味も、そしてその行動もかなり興味深いヤドカリさんだというのに、何もかも忘却の彼方に消えていたとなれば、これはもう画像の私蔵というよりも「死蔵」といったほうがいいかもしれない…。