甲幅 12mm
2011年10月に沖縄本島に襲来したの爆裂台風のせいでうちのボートが避難先の港で転覆してしまい、その後長らく修理のための入院生活に入ってしまった。
ボートがカムバックを果たしたのは翌年4月のことで、その間のオフシーズンのダイビングはすべてビーチエントリーに終始した。
最も手軽なビーチエントリーポイントといえば桟橋脇の海水浴場エリアで、そこならものぐさなだんなでもちょいと気が向けば潜ることができる。
当時ナガウニに住まうテッポウエビの仲間(ニジイロヤドリエビなど)が束の間のマイブームになっていただんなは、その日もそれらテッポウエビ類のほか、ヨコシマエビのチビチビやトウヨウヤワラガニなど、普段リーフの外ではなかなかお目にかかれないエビカニ類と遭遇していて、冒頭の写真のカニに出会ったのもその時のことだ。
が。
なんだか泥まみれで薄汚れていてパッとしないカニ…
…と思ったらしく、同じようなアングルからたった3枚撮っただけで終わってしまったらしい。
たしかに砂泥まみれではあるけれど、よく見ると赤や黄色の特徴的な模様が散りばめられていて、まみれている砂泥を落とせばけっこう魅惑的カニなのでは…。
調べてみたところ、どうやらこのカニはウキボリタコガニかメイロケブカガニのどちらかのようだ。
図鑑で見るかぎりだと両者はそっくりで、メイロケブカガニについて述べられている図鑑の解説によると
同じような環境に外観のよく似たウキボリタコガニがすむが、本種は甲の隆起に光沢が無ないことで区別できる。
とある。
ここで述べられている甲の隆起というのはおそらく、よく目立つ赤や黄色の模様の部分のことなのだろうけど、その光沢の有無と申されましても…。
全身に付着している砂泥さえなければ、見分けるのはもっと容易なのだろう。
この砂泥さえなければさらに、メイロケブカガニになら迷路のような赤い模様が、そしてウキボリタコガニなら人面のレリーフのようなかなり特徴的な紋様が観られるのだ。
それさえ見ることができれば…。
あいにく冒頭の写真と同じアングルの3枚の写真だけでは、いかんともしがたい。
ただ、件の図鑑のウキボリタコガニの解説によると、「泥が付着していることが多い」とあるし、図鑑に掲載されている写真を見るかぎりでは、ハサミ脚の関節部分の黄色い帯模様(矢印)は…
どうやらウキボリタコガニの特徴っぽい。
というわけで、このカニはウキボリタコガニということに決定。
というわけで今回この稿では、背中の人面レリーフ(これが「タコ」の由来なんだろうか?)ではなく、だんなの超テキトーなカニとの付き合いが浮き彫りになったのであった。