体長 10mm
同じところに毎日のように潜っていて飽きないの?と聞かれることがある。
その都度、
「海は毎日表情が違うし、何かしら新しい発見があります」
と答えている。ああ、なんと優等生的な答えだろう…。
でも事実なのである。
だからこそ、どれも似たような環境の白い砂底のポイントのどこを潜っても楽しく、暗い岩場よりは明るい砂地のほうが好きなので、カメラを携えて潜る時はおのずと砂地のポイントばかりになる。
とはいっても、それとはまったく異なる環境に潜ると新鮮だし、出会う生き物も違ってくるから、それはそれでやっぱり楽しい。
ウミカラマツエビは、私にとっていわば「普段とはまったく異なる環境」にいるエビだ。
その名のとおりウミカラマツというサンゴの仲間ついていることが多く、そのサンゴは水納島では私の知る限り砂地のポイントではまず観られず、岩場でも水深45mくらいの深場まで行かないと見られない。
しかもそんな深場で、ワシャワシャ繁るウミカラマツの枝という枝を過去に何度か目を凝らして捜索してみたものの、ついぞこのエビを見つけることができなかった。
ところが前世紀の昔にはちょくちょく訪れていた伊江島では、水深30m足らずのところでウミカラマツがワシャワシャ。
大喜びして探しまくった結果、ようやくウミカラマツエビと出会えたのだった。
その後中ノ瀬でも、30mよりはちょい深めのところにウミカラマツが茂っているのを見つけた。
ちなみにウミカラマツとは、こういうサンゴだ。
このテのサンゴはドロップオフ環境のような潮通しのいいところが好きらしく、なおかつ直射日光(?)がほとんど当たらない暗がりに育つ。
そんな暗がりでワシャワシャ茂る枝についている小さな小さなエビを探すなんて、クラシカルアイ世代の方には絶望的な作業だろう。
でも「エビエビカニカニ…」のディッシュドアイサーチが可能だった若い頃なら、枝の上にチョコンと載っている姿を見つけることができた。
「こんな小さな画像じゃ何も見えないよ」というクラシカルアイの方でも、PCでご覧の場合は↑この写真をクリックすると大きな画像になりますので、目を皿のようにしてお探しください。
四方八方に枝を伸ばすウミカラマツの群体は大きいから、他にも複数匹がついているようながら、深いし暗いし撮りづらいしでチャンスは1匹。
でもちゃんと撮れなかったけど…。
尻尾の先が写ってはいないものの、これがウミカラマツエビである、ということには私は自信をもっている。
冒頭の写真も、ウミカラマツエビであろうと確信している。
モンダイは、後年になってもう少し浅いところで出会った↓このエビだ。
これは同じ時にビシャモンエビもついていたススキカラマツ(?)にいたエビで、ビシャモンエビがペアでいたものだから、まだオトナになっていない若いビシャモンだとばかり思っていた。
でもこれくらいまで育っているビシャモンエビといえば…
…↑こんな感じになっているし、同じススキカラマツ(?)で見られるオレンジ色ものものも↓こんな感じ。
見比べてみると、なんか違う。
ひょっとしてこの細長いエビは、ススキカラマツ(?)についているバージョンのウミカラマツエビとか?
そう思い至って画像検索してみると、そういった宿主についているウミカラマツエビ(と紹介されているもの)は、尻尾のところがハッキリ3本線(特に両サイド)になっているものが多い。
ちなみにビシャモンエビのその部分は、3本あるけど真ん中がうっすらしている。
それに対し謎の細長エビのしっぽ(の両サイド)は……ハッキリ3本線!
しかしこれだけだと、まぁビシャモンエビの若い頃にだってそういうことがあるってことよ…で終わっちゃうかもしれない。
では↓これは?
謎の細長エビと同じ時に同じところ(水深27mほど)にいたエビで、このフォルムはフツーに考えて卵を抱えているメスと思える。
たとえ卵を抱えてはいなくとも、いくらなんでもここまで育って体の突起がこんだけしかないビシャモンエビなんていない。
ではこれはウミカラマツエビのメスなんだろうか。
でもこんな姿のウミカラマツの写真なんて観たことがない。
ウミカラマツエビではないとなると……いったい誰??
あいにくこの当時の私はフィルムカメラからデジイチへの過渡期でちゃんと撮れるカメラを持っておらず、この写真はだんなが撮ったもの。
だんなによると、同じところにいるビシャモンエビを撮っている時に見かけたそうな。
でも突起がショボくてカッコよくない若いビシャモンエビ…と思い込んだらしく、なんといささかピンボケなこの1枚を撮っただけで終っちゃったという。
このエビはいったい誰なのかということで当時盛り上がったのかどうか、なにぶん2007年のことなので記憶がまったく無い。
その後再訪して確認し直してさえいないところからすると、ひょっとすると当時の私も「あ、ビシャモンエビの若い子ね…」で終っていたのかもしれない…。
ご存知の方、テルアスプリーズ!