其之弐
はて、このキッカイなモジャモジャは、ウミシダか、はたまたイソギンチャクか。
正体が何であれ、観ているとウニョウニョウニョウニョと動いているから、動物であることは間違いなさそうだ。
そのウニョウニョっぷりをよく観ていると、まるで枝のように何本も伸びている触手を、1本1本かわりばんこに、中央にある口らしきところに運んでいることに気づく。
どうやら触手にまとわりついた何かを口に運んでい食べているようだ。
この触手はどうなっているんだろう…と指示棒か何かで触れると、このウニョモジャはピューッと砂の中に消えてしまう。
いったいなんじゃこりゃ?
その正体は、キンコと呼ばれるナマコの仲間。
言われてみると、そのウニョウニョの動きは、オオイカリナマコの食事方法に似ている。
あの口の周りの触手部分が異常発達し、それだけを外に出している状態、それがキンコの仲間のたたずまいというわけだ。
触手の形状はかなり繊細かつ複雑怪奇で、なんだか脳内のニューロンのような雰囲気すらある。
これでモノを食べるのではなくモノを考えていたら、キンコは激進化していたんじゃなかろうか…。
海水温が冷たい地方で食材として使われているザ・キンコは亜熱帯には分布していないだろうから、冒頭の写真はザ・キンコではなく、種は不明だ。
ところで、絶えず砂中に隠れているコイツの本体は、どんな形をしているのだろう。
おそらく、観賞魚業界では昔から知られている、「シ―アップル」と呼ばれるカラフルなナマコの親戚に似ていると思われる。
東南アジア~北オーストラリアあたりの年中暖かい海に分布しているシ―アップルは、カラフルだから外に出ているのか、外に出ているからカラフルなのかはわからないけど、本体ごと外に出て暮らしている。
水納島で見られるキンコの仲間は、いつも同じ場所にいるわけではなく、潜ればいつでも会えるほど数多いわけでもない。
むしろ出会いはレアケースといってもいいほど。
それなのにあまりに変態社会系クリーチャーであるためか、レアな出会いを素直に純粋に喜ぶ人はそう多くはない…。