16・水槽写真

 この日午後のミッションは、再び水中撮影。
 といっても、池の中ではない。

 濁っている池の中ではけっして撮れない、水の中で自在に動いている車えびや、ワラワラと群がっている彼らの様子を撮るにはどうしたらいいか。

 答えはこれだ。


撮影:オタマサ

 水槽!!
 出荷場にある、選別用の生簀である。
 本来はカゴに入れられた状態で浮いているエビちゃんを、生簀の中に解き放ち、それを水中で撮る作戦だ。

 その昔熱帯魚屋さんを回っていた頃は、水槽にいる生き物たちをさんざん撮っていた僕も、まさか自分が水槽に入って写真を撮る日が来ようとは夢にも思わなかった。

 ま、絶望的な透明度だった池に比べれば、ポッシブルなミッションかな??

 タンクを背負って生簀に入り、潜降。
 しかるのちに、撮影用にキープされていた車えびたちが、えび屋−Mさんの手によって投入された。


撮影:オタマサ

 僕が書くと、書けば書くほど遊んでいるように誤解されそうだけど、えび屋−Mさんの真剣な表情をご覧になれば、これがまぎれもなく仕事であることがお分かりいただけよう。

 で、投入されたエビちゃんたちを、水中からカメラを構えつつ見ていると、まるでジャブローに降下してくるジオン軍モビルスーツのようにワラワラワラと……

 ウフ♪楽しいッ!!

 ……だから、仕事なんですってば。

 こんなに大量投入されれば、撮影もあっという間に……

 ところが!

 エビちゃんたちは、着底した途端すぐさま生簀の縁に集まってしまう。

 水槽内で撮った写真を、あえて「池の中の写真です」と言い切る意図はないとはいえ、背景に水槽の壁があるというのは、やはり絵的にいただけない。

 なので、端でかたまっているエビちゃんたちをなんとかして中央に移して撮ろうとするのだけれど、1匹、2匹ならともかく、車えびワラワラ状態ってのはなかなか撮れない。

 かくなるうえは、水槽内で散らばっているエビちゃんたちをカゴに収納したのち、再度上から降り注がせる作戦をとるしかない。

 というわけで、まずは水槽内のエビちゃん捕獲。
 これがあなた…………

 楽しいッ!!


撮影:オタマサ

 なんだか、お祭りのアトラクションのような風情。
 傍らでうらやましがるうちの奥さん。

 ……だから、仕事なんですってば。

 仕事といいつつ楽しみながらエビを採っていると、若手スタッフも手伝ってくれて、あっという間にリセット完了。

 再チャレンジ。

 それを何度か繰り返しているうちに、水面越しに天井の蛍光灯を画面に入れると、水面でキラキラ輝く太陽に見えなくもないってことに気づき、後半は縦位置作戦で。

 すると、とても出荷作業用生簀内とは思えない、それなりの写真を撮ることができた。

 そうこうしているうちに、池で潜水作業をしていたオガタさんが戻ってきた。
 なにやら楽しそうなことやってるなぁって感じで生簀にお越しになったところ、それを見たえび屋−Mさんが、新たな指令を。

 「エビをチェックしている様子を撮ろう!」

 さっそくタンクを背負って、うれしそうに生簀に入るオガタさん。


撮影:オタマサ

 まぁヤラセといえばヤラセながら、本来彼らは、エビの状態をチェックする作業を実際に池でしているのだから、養殖場スタッフの作業の紹介という意味では必要な演出なのである。

 で、車えびを手にしつつ、エビの状態をチェックする(フリをする)オガタさん。

 うーむ………役者だ。<かなり楽しんでおられた。

 その堂に入った演技ぶりに感嘆しつつ、パシャパシャパシャと撮ってみた。
 すると……

 今回、池も含めて水中で撮った写真の中で、ベストショットをものすることができたのだった。
 モデルがよかったから???

 というわけで、本日午後のメインイベントも、ミッションコンプリート!!