4・辺銀食堂
本人的にはそれほど意識していなかったのだけど、このところの旅行記を振り返ってみると、ほぼ百パーセントのわりで冒頭に出てくるのが、那覇空港にあるキリンビールのビアスナック。 けっしてキリンの回し者ではない。 でも出発当日は、石垣に到着してからすぐさま仕事に取り掛かる段取りになっていた。 ……と自重するつもりでいた。 が、心優しきえび屋−Mさんは、 「モチロン、那覇空港でのビールで乾杯もぜんぜん構いませんが、少し、お腹あけておいてくださいね。」 と言ってくださっていたのだ。 で。
いつもどおり。 定刻どおり出発したANAは、あっという間に石垣空港に到着。 本島だってこの季節でも晴れれば「夏のように」なるとはいえ、この暑さはすでに「夏のよう」ではなくて夏そのものだ。 さすが八重山!! 寒い日もありそうだからとそれなりの上着を手にしていたのに、この日に限ってはまったくの無用の長物。 そんな夏日の空港で、迎えに来てくださったえび屋−Mさんと合流。 さっそく現場へ。 かのラー油で一世を風靡した、石垣島の超有名食堂である。 田舎道にポツンと1軒ある素朴な食堂……と勝手に思い込んでいたところ、実際に来てみると、市街地にあるなんともオシャレな内装のお店だったのでビックリした。 大先輩にはノンアルコールビールを飲ませ、 自分たちだけ地ビールを飲んでいるとんでもない後輩。 空港到着が13時半頃で、お店に到着したのはランチタイム終了直前、というかすでに入店可能時刻は過ぎていたタイミングだった。 もちろんあらかじめえび屋−Mさんが話を通してあったので、入店自体は可能ではあったのだけれど、店内のテーブル席がすべて合体して配置され、貸切表示になっていた。 なにやら、このすぐあとから「撮影隊」の貸切タイムになるのだそうな。 さすが石垣市内の有名飲食店、そういう客もいるのだろう。何の撮影だろう?? とにかくそのおかげで、我々の場所はカウンター席に追いやられてしまった。 しかも、今回の初ミッションである。 はたして、真田さんが解決してくれた方法はうまく機能するのか?? そんなことよりもなによりも!! ここでのミッションは料理の撮影。 車えびのイスラム揚げ どれもこれも「美味しい」という領域を遥かに通り越してしまっていたのはいうまでもない。 ああ、もう、思い出しただけでヨダレが……。 もちろんこのお店には、車えび料理のほかにも有名なメニューがある。その一つがこれ。
五色餃子。 餃子のことを気にしている場合ではなかった。 「熱いうちに食べよう!」 という周囲からのプレッシャーにとっとと蹴散らされ、ビールを飲みながらの楽しいランチタイムは、つつがなく終了したのであった。 そしてお会計の時。 「こんにちは。辺銀です」 なんとも渋い声の渋いご主人だ。 なんでまた、わざわざご丁寧にご主人が?? それは、翌々日の新聞で判明した。 撮影隊が撮影していたのは、辺銀食堂のご夫妻をモデルにした映画だったのである。 そのスタッフが食事に来る。 そこへ、まがりなりにも撮影機材らしきものを抱えてのこのこやってきていた我々。
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