7・出荷作業
快適なホテルで迎えた3月8日の朝。 ヴェッセル石垣島の海側10階の部屋から、石垣港の水路が見える。 9時前にチェックアウトを済ませ、ホテルの外に出てみると、すでにえび屋−Mさんの奥様が待機してくださっていた。 挨拶もそこそこに、一路養殖場へ。 出発前に見ていた週間天気予報では晴れマークは一つもなかったのに、この日も昨日に引き続きお天気はよさそうだ。 30分ほどで養殖場に着くと、すでに出荷作業真っ只中になっていた。 朝の出荷場は、無駄口をたたくヒマなど1ミリもない戦場だ。カメラを持つ僕と照明係のうちの奥さんは、そんな中をウロウロしながら、なるべく邪魔にならないように撮影しまくった。 懸念されたチカチカ蛍光灯も、ストロボに水中でカメラと接続するために使うファイバーのコードをつけてやると、敏感に反応することはなくなったので解決。 あらかじめえび屋−Mさんから伺っていた「おさえるべきところ」以外は、思うように好きなように撮っていい、ということだったので、林家ぺー&パー子もかくやというほどに、あっちでパシャパシャ、こっちでカシャカシャ。 「撮影」と聞けば誰しも多少はぎこちなるところかもしれないけれど、なにしろ当方の装備ときたらどんべえ。 それにつけても、みなさんの手際の良さといったら!! 池から水揚げされたエビちゃんたちは、まずは低温に維持された選別用水槽に収容される。 ちなみに、生き物としてのクルマエビは、ただされるがままにボーッとしているわけではない。 彼らの尻尾には、強力な棘がある。 久米島の養殖場でアルバイトをしていたころの僕なんて、いったいどれほどこの棘地獄に苛まれたことか……。 それはもう痛いなんてものじゃない。 その痛さから逃れるためにはどうすればいいか。 エビの扱いが上手くなるしかない。 まさにプロフェッショナルの世界だ。 ちなみに、出荷場内はエビたちのために冷房が効いている。 ところがこの日、社員のみなさんはどういうわけか皆さんTシャツ姿。 ……しかしよく見てみると、みなさん同じTシャツだ。 この日の撮影のために、えび屋−Mさんがスタッフにユニフォーム指令を出していたのだった。 このオリジナルTシャツがまた素敵。 これなんだかわかりますか? こんなものを知っているダイバーはかなり少数派だろうとは思うけれど、いわゆる変態社会のみなさんならとくとご存知のはず。 この、ようするにマニアックなデザインが、なんの説明もなしに胸元に。 素晴らしすぎる………。 このTシャツのデザインは、えび屋−Mさんが甲殻類学会でお知り合いになった、若いエビ研究者の手によるという。 描いたヒトもそのデザインを選んだヒトも、エビへの愛に満ち溢れていることがよぉ〜くわかるこのTシャツ、一部の変態社会に出せば、車えびと同じくらいの需要があるんじゃなかろうか。 ちなみに、ありがたいことに前日に我々も頂戴していたので、この日さっそくそれを着て仕事をしていた。 そうやって妙なところにも感動しつつ、出荷場内でパシャパシャしていると、出荷のための大栄空輸のトラック第2弾が到着した。 ここでもまた、ドドドドッという人海戦術で、山のように詰まれてあった車えびのダンボール箱が、あっという間にトラック内に収納。 そしてトラックは、一路空港へと向かう。 その昔久米島でのバイト時代では、出荷といえば養殖場のスタッフが空港まで直接トラックで荷を運ばねばならなかった。 それを考えると、今も時間との戦いは同じにしても、圧倒的なまでのこの便利さ!! そんなこんなで出荷場内で引き続き撮影していると、えび屋−Mさんが血相を変えて(というのはいささかオーバーながら)伝えに来てくれた。 「天気がとってもいいから、是非養殖場の風景を!!」 というわけで、次なるミッションは養殖場の建物の屋上!! |