C大内宿〜三澤屋〜(3月8日)
キジもサルもイヌも見せてくれたマウントビューあらためアニマルビューエクスプレスは、ついに湯野上温泉駅に到着した。鬼怒川温泉駅から約1時間、浅草からなら合計3時間半。いまどき3時間半もあれば、成田からサイパンくらいまで行けるのではなかろうか。 でもまた、その遠さがいいのだ。 この湯野上温泉駅の駅舎は、なんと日本で唯一の茅葺き屋根の駅舎なのである。 ホンモノの囲炉裏が!! ちなみに、先月オタマサが下見した際の湯野上温泉駅は、こういう状態だった。 撮影:オタマサ(2月1日) たったひと月でこうも変わるのだ。 …という話を、都会の人々は対岸の火事と思っていてはいけない。 さて、幸か不幸か雪が少ない駅に降り立った我々は、駅舎を通り抜け、すぐさまタクシーを拾った。 大内宿。 ならば、ひとまず宿へ行って旅装を解き、荷物を置いてからのほうがいいのではないかというところだが、宿のチェックインは15時。時刻はまだ11時半だ。 実際、駅舎にはささやかながらロッカーが備え付けられている。 というわけで、駅舎の目の前にある湯野上タクシー営業所で荷物を預かってもらい、我々は急に身軽になってタクシーに乗り込んだ。 ここから大内宿まではタクシーで10分ほどで、10分程度だと大して話もできないかと思いきや、その10分の最初のうちに、前回のオタマサ下見ツアーにおける彼女の疑問の一つがたちどころに氷解した。 この地方の家々によく見かける、屋根の上のこの飾り屋根のようなものが、オタマサはいったいなんなのかわからなかったのだ。 その解決を目指していたのでさっそく訊いてみると、運ちゃんは… 「囲炉裏の煙っ子逃すンだ」 おおっ!! なるほどなぁ……。 紅葉の季節には大渋滞になるという山道を10分ほど走ると、やがて大内宿に到着した。 さあ、江戸の雰囲気を濃厚に残す街並みをさっそく散策……… ……するのはまだ早かった。 なので、うちの奥さんにとっては再訪問になる今回の会津行のなかでもこの蕎麦屋攻略は、オタマサリベンジ編とでもいうべきメインイベントだったのだ。そのため今このときの我々の作戦は、大内宿到着早々すぐさま蕎麦屋に立ち寄る、ということになっていたのであった。 店は、江戸時代の宿場町を形成している建物の一画にある。そう、この大内宿の建物群は、どれもこれも皆現役の建物で、さすがに観光客向けのお店がズラリと並んでいはするものの、人々はここで暮らしており、我々が行こうとしている蕎麦屋もそのうちの一軒なのだ。 蕎麦屋の名を三澤屋という。 で、この三澤屋では、お蕎麦を一本の長ネギを使って食べる、という一風変わった食べ方をウリにしているというので、我々はもちろんその高遠蕎麦を食べてみたかった。 お昼前のこの時間、はたして空いているだろうか?? …ほんの少し待っただけで、すぐさま座れた。 外観同様雰囲気のある店内は思いのほか広く、趣的には駒形どぜうに似ている(江戸を喰う!コーナー参照)。 ちゃんと席につけたことに喜びを噛み締めつつ、さっそく高遠蕎麦を注文。もちろん、ビールも忘れない。 あと、山女の踊子という、正体不明のものもあったので、仲居さんに尋ねてみると、ヤマメの天麩羅だという。 「…けっこう量が多いですよぉ」 と、留めてくれた。 で、一通りオーダーが済んだ後、真っ先にやってきたのがこれだった。 お漬け物である。 「自家製の渋柿の塩漬けです。今の時期しか出せないんですよぉ」 柿の漬け物!? これが……… 美味い!! いやあ、ビックリ。 続いて、汁物が出てきた。 「ビールのお通しです」 え?? このあと調子に乗った我々は、しょっぱなから日本酒も頼んでしまったのだが、それにもまた、美味しいおからのお通しがついていたのだった。 ちなみに、もちろん両者ともお通し代として料金につけられているわけではない。どうやら会津地方とは、これでもかというくらいのお通しカメーカメー文化であるらしい……。 というわけで、我々の囲炉裏端は食べ物で溢れかえってしまった。 でも、実際心地よくなりますぜ。 彼女が頼んだどぶろく。 おまけにお通しのお汁やおから、岩魚の塩焼きも漬け物も美味しい。 岩魚の塩焼き。ワタ部分には味噌が詰められていて、これがまた美味い!! そしてお待ちかね、高遠蕎麦の登場だ(ちゃんとシメのタイミングになるよう、見計らってくれる)。 これがまた……………美味い!! 蕎麦湯も出してくれるので、蕎麦のだしに日本酒を少し混ぜ、そこへ蕎麦湯を注ぐという、オリジナル蕎麦湯を勝手に作って飲んでみたら、これがまた美味い。 いやあ、もう腹一杯。 そんなこんなで、ああなんてことだ、まだ肝心の大内宿散策もまだだというのに、すっかりいいコンコロもちになって、どこかそのあたりで寝ていたい……という気分になってしまったではないか。 今日のメインテーマはなんといってもこの三澤屋だったので、すっかり目的を果たした我々は、すでに大満足の境地になっていたのだった。 こんな状態で、大内宿を歩き回れるのか?? |