B車窓で桃太郎(3月8日)
今回の出発は那覇からではない。 新宿は西新宿にある西新宿ホテル朝6時半。 目指すは東武浅草駅。 目的地は会津の湯野上温泉。 東武浅草→鬼怒川温泉→湯野上温泉 という行程だ。 はたして、こんな複雑な行程の乗車券を、新宿に井の頭線があると思っていた …と書くと、事態は出発前からにわかに波乱含みになりそうだが、何を隠そう、実はうちの奥さんは、時刻表と照らし合わせながらの旅行計画というものが大好きなのである。たしかに、時刻表を細かく見るという作業は、なんとなくフォレスト・ガンプ的であるとも思える。 ところが東武浅草駅の券売システムでは、このあまりにもフォレスト・ガンプ的複雑怪奇な購入方法が処理しきれないらしく( JRとの併用になるため)、発券まで10分〜15分かかるという。世の中便利なようで、アナログモードには逆に弱くなっているのだ。 東武浅草駅8時発の特急きぬに乗れるよう、余裕を持って到着したというのに、発券が遅いおかげでビミョウにギリギリになってしまった。 ともかく無事切符を購入し、オベントとお茶を買って乗車。 ホームと車両との間には橋が架かっている。 この橋は自動ではなく、駅員さんによる「手動」。 これは…………落っこちるでしょ。 日曜日だというのに車内は空いていて、席もゆったりしているので、鬼怒川温泉駅までの2時間は、居心地よく過ごせそうだった。 ああなんてことだ、フタを開けた写真を撮るのを忘れた。 モグモグ食べているうちに電車は進む。 「鬼怒川温泉までは、まぁ普通にのどかな景色だから寝てても大丈夫だよ」 先月は、鬼怒川温泉駅を越え、野岩鉄道、会津鉄道のルートになるあたりから、山を越えるたびに雪深くなっていったという。 というわけで、モグモグしたあといつの間にか寝ているうちに、あっという間に鬼怒川温泉駅に到着した。 やるじゃないか、コンマサ!! ディーゼル機関車なので架線がない。 ※この写真は湯野上温泉駅です。 やがて線路はいよいよ山間を縫うようになり、トンネルを出ては入り出ては入りを繰り返すうちに、いつしか窓外は雪がまだまだ多く残る景色になっていた。 どのあたりだったろうか。 「キジだ!」 おお………野生のキジだ!! しばらくいくと小さな町になり、その駅近くでまたうちの奥さんが… 「サルだ!!」 指差す方向を見ると、民家の庭先に野生のサルが!! なんてことだ、あと犬にさえ出会えば…………… 桃太郎だ!! 当然のように、犬もクリアした。 ……って、何をしているのだ。 とにかく、単線の野岩鉄道ならびに会津鉄道沿線は、キジもサルもイヌも出てくる、素朴にステキな桃太郎線路なのだった。 それにしても、現代日本の鉄道でさえ、それも浅草からでさえこんなに遠いのである。こんなに遠い道のりを、京都守護職を引き受けたあとの会津藩は、千名もの軍勢を引き連れて京へ上った。考えただけで気が遠くなる……のを通り越して気を失うほどではないか。 彼らも道々で、キジやサルに出会ったろうか………?
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