A準備万端ラーメン一丁!(3月1日)

 「鱗」での個展はひと月単位なので、Masae工房のコテン。も3月一杯。で、鱗は日曜日がお休みだから、開催は3月2日からとなる。
 そこで3月1日を準備の日に定めた我々は、前日のうちに上京、埼玉にあるうちの奥さんの実家に到着していた。

 西部池袋線元加治駅なので、西永福に行くにはけっこう時間がかかるものの、まぁ1時間もあればあらかた準備は終わるだろうと高をくくっていた僕は、当日朝もゆっくりできるものと信じていた。

 ところが、いつの間にかうちの奥さんとウロコムシさんとの間でダンドリがなされており、朝9時半に現地集合ということになっていた。
 2月はウロコムシ氏一味の鉄っちゃん写真展だったので、その片付けと平行して我々の準備を行おう、ということのようだ。
 また、その準備が終わった後にやりたいことがあるとまたまたウロコムシ氏がワガママを言っていて、それを実現するには準備が早く終わらなければならない、という事情があるらしい。

 が。
 9時半に西永福に行こうとすると、7時半に家を出なきゃならないというのである。
 何を考えているのだ、まったく。
 これが通常であれば、ただちに却下、やりたきゃ勝手に先にやっててくれというところなのだが、いかんせん、全面的に世話になっている立場の我々である。仕方なく、超仕方なく、二日酔いの頭を抱えて7時半に家を出る羽目になってしまった。

 ウロコムシさん的には、準備には時間がかかるという。
 奥さんのナゾナゾライバルさんも、先月のウロコムシさんたちは昼から始めて夜の7時過ぎまでかかっていた、と教えてくれる。
 すでに僕の頭の中ではすっかり完成しているこの準備、なんでそんなに時間がかかるのかまったく理解できなかったのだが、やはり現場じゃないとわからないこともあるし、思っているよりも時間はかかるかもしれない。
 でも!!
 それでも、2時間もあればあらかた終わる。
 どう考えても終わる。
 なのになんでこんなに早く出かけなきゃならんのだ………。

 電車を乗り換えて乗り換えて、東京のヒミツスポット西永福に降り立ち、歩いて5分もかからないところにある鱗に到着すると………
 すでにウロコムシご夫妻が後片付けを始めていた。我々の多量の荷物も早運び込んでくださっている。

 さあてさあて、いよいよ準備開始〜!!

 2時間で終わった。
 多少の変更は余儀なくされたものの、ほぼ当初から僕の頭の中にあった計画どおり。

 これにはウロコムシご夫妻も驚かれたのだが、それはひとえに、送っていただいた詳細データのおかげなのであった。


まるで店の主であるかのような2人

 なんだかんだ文句を言いつつ、彼がいなければこんなに順調に準備できなかったわけだし、ここまでお世話になったのだから、そのワガママに喜んでお付き合いさせていただこう!!

 というわけで、このあといったんウロコムシ邸まで余分な荷物を戻しに行き、ついでに上がらせていただいた。
 ウロコムシ邸についに潜入!!

 そのあと、ウロコムシ氏がどうしても僕に食わせたいチャーシュー麺があるというので、そのラーメン屋さんに行くことになった。
 ご存知のとおり、僕はラーメンにはまったくウンチクを持たない身ながら、ラーメン屋といえば何をさておいてもチャーシュー麺を頼むという単細胞男である。
 そんな単細胞男にも違いをわからせようと、ウロコムシ氏は秘蔵のラーメン屋を紹介してくださるというのだ。

 それは、西永福の隣の駅前にあった。

 その名を「支那そば たんたん亭」という。
 中華そばではなく、支那そばというところが素晴らしい。素晴らしいといえば、店頭にチャリンコが並んでいるのも素晴らしい。地域に息づくお店、という匂いが充満しているではないか。
 人気店らしく、さして広くない店内はすでにいっぱいで、我々は表で待たざるを得なかった。外で並んでまでラーメンを食べたことなどない僕はその時点で初体験だったのだが、さほど待つことなく入ったあとに出てきたチャーシュー麺は、そんじょそこらのチャーシューとは一味違った。いや、味以前に、作り方が違った。

 日本で食べるチャーシュー麺といえば、チャーシュー(焼豚)といいながらも煮豚であることが多い。ところがここたんたん亭のチャーシューは、本当に「焼豚」なのである。
 本場中国で焼き豚といえば、本来こういう姿であるらしい。さすが支那そばという店だけあって、チャーシューが本場仕様なのだ。

 一方、うちの奥さんが頼んだのは、ミックスワンタンメン。エビ入りと挽肉入りのワンタンがプリプリッと乗っかっている。
 一つずつ分けてもらったところ、これがまた点心のようにプリプリして美味い!!メニューにはチャーシューミックスというのもあって、チャーシュー麺にこれらワンタンが乗っている最強バージョンもあった。次回は迷わずそれを頼むとしよう。

 それにしても、実は今朝までの僕は極度の二日酔いで、準備が終わりかけていた頃は吐きそうなほどだったというのに、今こうしてすすっているダシの胃に優しいことといったらない。
 これまで僕は、醤油ラーメンというものに対してそれほど愛を感じたことはなかった。それが今、しみじみと深い感動を味わっている………。

 そしてこの後日、その感動はさらなる深みへ進むことになる。

 さて。
 こんなに美味しいラーメン屋さんに連れてきてもらったのだから、これをもってウロコムシさんのワガママだなんていったらバチが当たると言われそうだ。もちろん、これだけだったら感謝感激、早出の文句を言ってすみません、感動の味をありがとう!って言って心地よくお別れできたことだろう。

 が。
 これでお別れではないのだった。
 まさか、まさか、あんなことが実現する日が来ようなんて……。