本編・24
夢かうつつか−32度 昨夜は、アワレンジャーを撮るなどという余計なことをしたせいで疲労の極に達してしまったので、今宵はのんびりと静かに過ごしてみることにした。 そのため、夕食後からきらめき始めていたオーロラを目にしても、もう初日のように慌てふためいたりはしない。のんびり準備をしに部屋へ戻る。 余裕で今宵に臨む我々だったが、残りのフィルムには余裕がなかった。 これまではずっとメインロッジのほうでばかり撮っていたので、今夜はまずオーロラロッジ方面で撮ってみることにした。オーロラと共に写る背景を変えてみるという意味もある。 昨夜から日中にかけてやや上昇していた気温は、この夜再び急速降下し始めた。 寒暖計はどんどん下がっていく。 そしてついに、我々の滞在中の最長不倒記録、マイナス32度に達した。 しかし、初日マイナス10度ほどで震えていた体も、風がほとんどないこともあって、肌さえ露出していなければ心地よいとさえ感じるほどになっていた。 徐々に慣れてきているのだろうか。 もっとも、熱しやすく冷めやすい体積の小さなうちの奥さんは、外に出たままでいられるのは40分くらいが限度のようだったが。 ロッジでは、相変わらずカナダの猟師が夜の友だった。 そんな彼が駆使するロッジ備え付けのパソコンでは、いつも北極側のオーロラ帯の様子をリアルタイムで表示するサイトが画面にあった。 こういったオーロラ関連のことも、アラスカお土産品事情も、もちろんあらかじめ僕たちが知っていたはずはなく、滞在中にコービィさんからうかがったことである。すでに滞在4日目というのに、相変わらずバカな質問をしては、彼に教えを受けている我々だった。 このうえいったい何が必要というのか。 そんななかで、うちの奥さんはといえばいたってマイペース。まわりでカメラの準備やなんやかんやをやっているがだんだんバカらしくなってくる。 干し肉という名のシアワセをかみしめながら、いい心持ちのようだ。 〜♪ 周りパリパリ 中シットリ〜 噛めば噛むほど 味が出る〜 なにやらわけのわからない歌を歌っていたかと思ったら、気がつけば舟をこいでいた。 寝ても夢、覚めても夢。 |