12・福江をさるく・7〜福江川編〜

 宗念寺の墓地は福江川沿いにまで広がっているので、墓地を出たところから少し足を延ばすとすぐに、前日散歩したあたりの福江川沿いになる。

 宗念寺のあたりになると、福江川はこのように、いかにも街中を流れる人工的な川といった雰囲気。

 ところが、ここからほんの少し遡ってみると、川の様相はガラリと変わった。

 下流側にも鯉がウヨウヨ、水面にもカモが泳いでいたとはいえ、こちらのほうがよほど生命の存在感に満ち溢れている。

 こういう環境になると、そこで暮らす鳥の種類もグッと増えるはずだから、何かいないかとサーチしていると……

 バンがいた。

 沖縄でも観られる水辺の鳥だ。

 こういう鳥がいるということは、その餌となる生き物もたくさんいるに違いない。

 すぐそばが市街地なのに、10歩歩けば野鳥の園。

 川にはその他、野生化したミドリガメ(ミシシッピーアカミミガメ)らしき大きなカメが日向ぼっこをしていた。

 さらに遡ると、川岸に降りることができる階段状の構造があったので、さっそく降りてみる。

 階段というにはやけに一段一段が高く、平面がやや傾斜しているから歩きづらいところを無理に降りて……

 福江川初タッチ。

 さすがに川の水は、岩川湧水とは違ってとっても冷たい。

 見た目やや泥っぽい堆積物が多そうに見える川底には、そこかしこにコイツがいる。

 イシマキガイ(の仲間)。

 熱帯魚飼育などでは、水槽に生えてしまうコケ取りに役立つ貝として重宝されてもいる。

 日本全国の川や河口域で普通に観られる貝ではあるけれど、その生活史は海と淡水を行き来するタイプのため、河口域と川がともに健全じゃなければ、やがて姿を消していく運命にある貝でもある。

 こうしてたくさんこの貝がいる福江川は、たとえ上流に立派なダムがいくつかあるにせよ、まだまだ川も河口も「生きている」ってことなのだろう。

 段差が高い階段がちょうどベンチ代わりになるので、しばらく川面を眺めながら座って休憩してみた。

 歩いていてもたっぷり実感できるけれど、沖縄では観られない系の野鳥の群れが行き交いするのを眺めつつ、こうして座ってボーッと眺めてみると、のどかさはさらにパワーアップする。

 エネルギー充填が完了したので、階段モドキを登り始めると、降りしなには気づかなかったこういう花を傍らに見つけた。

 テッポウユリに比べると葉がやたらと細長いユリの花。

 観たことがなかったから後日調べてみると、どうやらこれはタカサゴユリという花のようだ。

 その名のとおり台湾原産ながら、日本には園芸用植物として20世紀の初めに移入されたという。
 その後は持ち前のたくましさもあってあっという間に帰化し、全国に広がったものの、ヒトの手によって原野が次々に拓けていくにつれてどんどん減少中らしい。

 といってももともと強い植物だから、こういう場所に何かの拍子にポッと花を咲かせることもあるそうだ。
 きっとこの一輪の花も、「なにかの拍子」が咲かせたものなのだろう。

 誰も知らない間に、やがてこのあたりがリリーフィールドになってたりして。

 再び川沿いの道に戻り、さらに遡って歩いていく。
 川はさらにさらに続いているけれど、これ以上遡っていくと取り返しのつかないところまで行ってしまいそうだったから、そろそろ帰路につくことにした。

 川沿いから一般道に出ると、交番があった。

 モダンなデザインの交番。
 しかし近代的なのは建物のデザインだけではなかった。

 その昔は交番とか派出所といえば自転車が定番だったのに、近頃は原チャリ装備っすか……。

 いざとなったらピザでも配達できそうなポテンシャルを秘めている……。

 テケテケ歩いているうちにやがて商店街アーケードに入り、例のスーパーでモロモロを調達してからホテルに帰還。

 午前中ほどではないものの、午後もたっぷり歩いたぜい。

 そしてひとっプロ浴びた後は、1日のメインイベント、お酒の時間の始まりだ!!