ハワイ紀行
〜またの名を暴飲暴食日記〜 |
12月5日(日)
赤ちゃんを見に行こう 今日は日曜なので弟君も休みである。彼はこのところ毎週末ごとに、実家に帰っている奥さんと先月生まれたばかりのベビーに会いに行っているという。せっかくなので我々も同行し、姪にあたる赤ちゃんに会いに行くことにした。 実家は東松山にあるから、少々ドライブをすることになる。途中銀座コージーコーナーで手土産を買った。うちの奥さんの実家付近で手土産に買う菓子といえば、本来なら「かにや」のケンキが有名なのだが、手土産とは言いつつも自分たちも食いたかったので、コージーコーナーになってしまった。立ち寄ったこの店は工場直売店で、店頭に並んでいるのは作りたてだそうだ。 実家に到着すると、若奥様が出迎えてくれていた。産卵、じゃないや、出産という大仕事を終えた貫禄がほんの少し見受けられた気がした。さっそく家に案内され、二人の小さな宝物を拝見。いやあ、生まれたばかりの赤ちゃんというのはちっちゃいねぇ。弟君もただでさえ下がっている目尻と眉が一段と下がり、すっかりパパになっていた。 若奥様の母君は3人の子を育てたベテランで、良きアドバイザーとなって若奥様を指導しているらしい。しかし、やはり30年近い年月というのは、子育ての常識・非常識というものも変えてしまったようである。昔ならこうだった、ということが今の産婦人科や育児本ではあっさり否定されていたりするそうで、必然的に育児をめぐる口論が親子間で絶えない、ということがままあるようだ。 どこでも満腹 お昼はご実家の父君に、お向かいにあるイタ飯屋さんでごちそうになった。なんでも甥にあたる方が経営されているらしいのだ。 ここでもまた流れのままに生ビール。メインディッシュが来る前に軽くピザやポテトをつまみにグビグビ、パクパク。真っ昼間から酒を飲む、というのは一種背徳の陶酔感があってうまさも倍増である。そのうえ、胃がややもたれ気味とかいいながらも頼んだパスタはカルボナーラ。もう私のことをアホと呼んでいただいても差し支えない。さらに、みんなが食いきれずに残ってしまったつまみ用のピザも食ってしまった。こんだけ食って最後に太田胃散を飲んでいては世話はない。 実家に戻ると追い打ちをかけるようにお茶の時間。いや、本当にもう食えないっす、という私の声には誰一人耳を傾けてはくれず、既定路線のコージーコーナーのプチケーキが並べられてしまった。これがまたおいしいんだわ。3つも4つも食ったらきっと甘さで気持ち悪くなるだろうけれど、プチケーキというのは非常に良心的なサイズで、ああ、もう少し食いたい、と思えるあたりでおしまいになる。値段も100円代だから素晴らしい。 なんだか赤ちゃんを見に来たのか、腹一杯になりに来たのかよくわからないまま実家を辞去し、我々は旅行バッグを買いに行った。これまで海外旅行といえばダイビングをしに行くことだったので、バッグはダイビングの機材を入れるためのキャリアーバッグしか持っていなかったのだ。通常の旅行者がごろごろ転がしているようなバッグを、この機会に一つ買っておこうということになった次第である。ちなみに出発は翌日なんだけど……。 準備よし! 晩ご飯は軽く鍋で済ませ……いや、軽くなかったなあ。豚しゃぶもうまかったし、締めのうどんをつい食いすぎたもんなあ。 とにかく食後人心地ついてからようやく旅行の荷造りを開始した。でも二人でバッグ一つなので、荷造りはほとんどうちの奥さんがやっておしまい。しかもややこしい機材を工夫しながら詰めることもないし、重量制限を気にすることもない。ダイビングやカメラの機材がないとこんなにも荷造りは簡単なのか、と我々は今さらながら知った。 初海外旅行である父ちゃんはすでに荷造りを済ませていて、余裕綽々である。あれこれ悩んでいた持って行くべき服や靴の問題も解決し、準備万端用意はバッチシ、らしい。だがちょっと待てよ、もしかしてパスポートやクーポン券も機内預けの荷物に入れていないか?と思って訪ねたら、案の定厳重にしまわれていた。危うく空港に入る手前から荷物を開けてあたふたしないといけないところだった。セーフ。 K1グランプリ決勝 荷造りも終了後、寒いこともあって早々に布団に入ったが、今晩はK1グランプリの決勝である。K1グランプリというのは、きっとF1グランプリに引っかけたに違いない安易なネーミングだが、いつの間にかその人気は本家のF1をはるかに凌ぎ、正統的格闘技としての地位を盤石にしている。 私にとってのプロ格闘技は、第一回の IWGP決勝でアントニオ猪木がハルク・ホーガンに敗れた一戦をもって終わっていた。しかし、プロレスを観るためにニューヨークへ行くほどの格闘技大ファンの友人が、4年前わざわざビデオを持ってきてまで私にこのK1のおもしろさを訴えたのだ。以来テレビで放送があればなるべく観るようにしていたので、最近は誰が強いのか、なんてことは、もうその友人に訊かなくても知っている。そんな格闘技の年間王者が決まる放送を見逃す手はない。ちなみにうちの奥さんはとなりでスヤスヤと眠りについていたが。 この日は初戦から好カードが目白押しで、特にピーター・アーツとジェロム・レ・バンナの試合はすさまじかった。事実上の決勝戦という前評判どおり、互いにダウンを奪い合う激闘で、勝負は2ラウンドで終わったもののもの凄く濃い内容だった。昨年の圧倒的な強さを思えば、ピーター・アーツは誰にも負けないに違いないと思っていたし、事実1ラウンドでバンナからダウンを奪ったときはやっぱりピーター・アーツ!!と誰もが思ったに違いない。ところが2ラウンド早々にバンナのラッシュが始まり、強烈な左フックがピーター・アーツを直撃、なんだ、いったいどうしたんだ?という顔をして沈んでいくピーター・アーツの顔がとても印象的なノックアウトのシーンであった。 事実上の決勝戦というのだから、もうバンナの優勝か?きっと誰もが思ったに違いない。準決勝を前に、もうバンナが出る決勝の話をゲストや解説者たちがしていたくらいだから。でもその予想を覆すヤツがいた。97年のチャンピオン、アーネスト・ホーストだ。 そもそも、ボクシングに重きを置くバンナのような選手が勝ってしまうようだと、結局はヘビー級ボクシングのチャンピオンにはかなわない、ということになってしまうじゃないか。それはいかんだろう、と思っていたらアーネスト・ホーストがやってくれましたぜ。 1ラウンドは一方的にバンナに圧されっぱなしで、ああだめだ、こりゃだめだ、と見ていられなかったのだが、後から考えるとあれはずっと虎視眈々とバンナの隙をうかがっていたのか。相手に打たすだけ打たせて疲れさせていたのか。2ラウンドの、息を吹き返したようなホーストのラッシュは、バンナのたった一度のわずかな隙から始まり、逃すことなくバンナをマットに沈めた。ずっと勝機を一点に絞って耐えていたのだとしたら1ラウンドのホーストもすごいとしか言いようがない。 そんなすごいヤツが決勝で負けるはずがなく、ホーストは見事にK1グランプリ99の王者に輝いたのであった。 順列都市 テレビを消すといきなり静寂が訪れたが、頭の中はアドレナリンが暴れ回っていた。旅行を明日に控えた静かな興奮も沸いてきて、2種類のアドレナリンと、寝なければならないという指令が頭の中でバトルロイヤルを始めてしまい、なかなか寝付けなくなってしまった。 仕方がないので、ここ2,3日ハマっている例の「順列都市」を取り出し、読みふけることにした。気が付くと、もう下巻の4分の3は読み終わっている。ハワイで読もうと思って買ったのに、出発前に終わってしまってどうするんだ。明日空港の書店でまた何か買わなければならないではないか。 ちなみにこの順列都市、近頃評判のグレッグ・イーガンという作家のハードSFである。ハードSFというのは科学的知識盛りだくさんで、現代科学とその作家のサイエンスフィクションを論理的に絡め合わせて用いつつ、話が作られているものである。正直に言って私はきっとこの本に書かれている内容を6,7割くらいしか理解していないに違いない。 理解不能の言語を咀嚼しようと奮闘していると、いつの間にかアドレナリンは体の隅々に吸い込まれたようで、頭の中のバトルロイヤルは終わっていたらしい。それに気づく前に私は夢の中に入っていた。 |