8・伊平屋周遊半日コース〜ワンダー野甫島編〜

野甫島は、地図で見ると伊平屋のおまけのような島である(地図上14番から先の島)。
それでもやはり、橋がなかったころは今以上に明確に別の島という感覚で人々は暮らしていたのだろう。
橋がつながっている今日でさえ、なんとなく集落のたたずまいが両島で違って見える。
そんな野甫島に初上陸!!
といっても、特に大きな目的はなかった。
詳しい地図を持っているわけじゃなし、橋を下りてから適当に進んでいると、先に紹介したガキヤヒロシさんオススメの塩の博物館らしき建物が見えてきた。
らしき建物……といっても、知らなければそれが塩の博物館とはとても思えないだろう。
立派な立派なログハウスなのである。

伊平屋も野甫も、このような平たい石で組まれた石垣が多かった。
しかし一歩その中に入り込めば、空恐ろしいまでのオーナー夫妻の塩への情熱に圧倒される。
世界中から集められた様々な塩の結晶のオンパレード!!

館内。2階もある。(撮影:オチアイ)
塩の結晶といっても、調味料の塩のような小さなものではない。何でこんなにでっかいの!?というくらいに巨大で、しかもカラフルな色が天然についているものがそこかしこに陳列されているのだ。
その一方で、まるで放散虫の骨格のように美しい小さな結晶をルーペで拡大して見ることもできる。
とにかくここは、塩・塩・塩。
おそるべし塩の館、ソルトクルーズ<正式名称。
もちろん、ここでしか買えないという野甫の塩「塩夢寿美(えんむすび)」をお土産に買っておいた。
とにかく買い物をしたいリョウ君がここで土産物を買い逃すはずはなく、彼も即座に買っていた。
ナァナは団子より花、このログハウスのたたずまいを堪能していた。
この塩の博物館・ソルトクルーズの隣は、野甫小中学校である。
まだ館内にオチアイやうちの奥さんがいる間、一足先に外に出ていた僕とキッズは、その野甫小中学校の校庭の片隅で、子供たちが数名で遊んでいるのを見つけた。
「いいなぁ、こういう感じ……」
ナァナは言う。うん、たしかにいい感じだねぇ。
でもさ、君たちだってかなり大勢の人たちにうらやましがられている環境なんだよ。
「そうなの?」
そうなの。
うん、そうだ、せっかくだから交流しよう!
というわけで、キッズを率いて、野甫の子供たちと親睦を深めに行くことにした。
校門からそっと声をかけてみる。
「ねぇ、水納島って知ってる?」
そう問うと、おそらく中学生であろう年長の少年が「はい」と答えてくれた。
ま、このご時勢である。
沖縄県のこんな田舎とはいえ、学校に迫り来る魔の手はいくらでもあるかもしれない世の中にあっては、僕なんてとてつもなくアヤシイおっさんに見えたろう。けれどさいわいバックにはナァナとリョウ君がいる。
僕たちがその島から来た旨を告げ、一緒に写真を撮ろう!と呼びかけてみたところ………
戸惑い、迷い、困惑し、躊躇し、それでもやっぱり写真くらいならいいか、と思ってくれたのか、子供たちは校門までやってきてくれた。
よし、野甫小中学校と水納小中学校・初の共演だ!!パシャッ。

野甫小中学校の校門にて
写真はプリントして送るからね!
彼らに聞いたところでは、児童生徒は12人いるらしい。
「いいなぁ……」
そうつぶやく水納島の子供たち。
水納小中学校も、9人いたとき…つまりナァナが小学1年生の頃…が面白かった、とナァナがいう。
たしかに4人じゃねぇ…。
そればっかりはどうしようもないものね。
我々が校門にいることに気づいたオチアイとうちの奥さんが、車を校門に乗り付けてきた。
校門に人がたむろするという、普段はありえない事態に、何事かと思ったのだろうか、土曜日なのに学校にいる先生が表に出てきたので事情を話すと、さきほどターミナルで会った女性が伝えていてくださったのだろうか、どうぞどうぞと学校内へ迎えられた。
こういう、水納島と同じような僻地の学校にキッズはやはり興味があるらしい。
グランドのサイズとか体育館のサイズとか、何がある、これがあるといろいろ目を引くものが多いようだ。
そのなかでも、リョウ君の目がキラリと輝いたのは……
滑り台だった。
いいか、行政担当者諸君。
離島の子供たちにとっては、巨大な待合所とか立派な岸壁などよりも、滑り台1台のほうがよっぽど必要なのであるぞ。
あんなに立派な宇宙基地のような待合所はあるのに、なんで水納島の校庭には滑り台が無いの??
そのあと、島の小高い場所にある野甫展望台というところに行った。
「海の広さが実感できるポイントです」
島案内のチラシにそう書かれていたとおり、絶景かな絶景かな。
ほら、あれが伊是名島だ!

というシーン。
ここでもリョウ君のガンダルフの杖は活躍している。
ちなみにこの展望台は、海の広さを実感できるのもさることながら、屋根の小ささも実感できる。
笑ってしまうくらいに小さいのだ。
なんで?とつい思ってしまうくらいに……。
屋根は小さいけど、この展望台には展望台フロアから下へと続く滑り台が併設されていた。
ほら、行政担当者、この写真をとくと見よ。

ちなみに僕も滑った。
もう一度言う。
島の子供たちに必要なのは、立派な待合所じゃなくて1台の滑り台なのだ。
前述の島案内のチラシというのは、塩博物館で配布されていたコピー紙で、手書きの地図に手書きの文字でいろいろ細かく書いてくれてある。ちょうどクロワッサンで配っている地図のようなものだ。
そこに、うちの奥さんの琴線に触れまくりの、とても気になる記述があった。
野甫売店。
島唯一の店。レトロな感じはまるで映画のセットのよう。特に夜はムード満点
うーん、いい感じじゃないか。
「ねぇねぇ、レトロって何?」
リョウ君が素朴に問う。
うん、悪く言うと古臭いってことかなぁ。よく言うと、古い中にも懐かしさがあるって感じのこと。
「ふ〜ん……」
わかったのかわからなかったのか、そもそも10歳の少年に古さの中に懐かしさを感じろというほうが無理とも言える。
ちょこっと道に迷った挙句、ようやく場所発見。
いやはや、レトロというより、外から見たら一般家屋。これじゃ見つけるのは難しかろう。たまたまパン屋さんが搬入作業をしていたのでそれとわかった。
車をちょっと離れた広場に停め、テクテク歩いて敷地内に入ってみる。
「いいねぇ、ここ!!」
おお……。リョウ君、幼い君にもわかるのか、こういう感覚が。

店内には履物を脱いで入る。
電灯がついているわけではないので、店内はなんだか昭和博物館の開館前って雰囲気だ。
そのくせじゃがりこが置いてあるなど、食品関係は思ったよりも品揃えは豊富で、その他生活雑貨からなにから随分揃っていた。
ちなみに、傍らにつるされていた「写るんです」を見てみると、使用期限は2004年11月。
ああ、一年も前じゃん…………。
まぁそれはご愛嬌だ。
もちろんビールもあった。リョウ君の必需品、三ツ矢サイダーも置いてある。
試しにビールの裏側を見てみると………大丈夫、先月末製造の新品だった。
はい、乾杯!!

撮影:オチアイ
お尻を向けて作業をしているご婦人は、ここに菓子パンなどを搬入している方だったのだが、何を血迷ったのか、オチアイに
「学生さんですか?」
有頂天になるオチアイ。
きっと御婦人は老眼鏡をお忘れだったのだろう。
話の行きがかり上、我々が水納島から来たことを話すと、
「だったら、○○○さんってわかります?」
おお、またしても○○○さん。
知っているも何も、この子はその方の姪っ子なんですよ、と、またここでも紹介しておいた。
すると、ご婦人は○○○さんのお住まいがある部落まで僕らに紹介してくれた。
「会ってみたいなぁ……」
つぶやくナァナ。
うーん、会わせてあげたい。明日あと半日長く島にいられればなぁ……。
そんなこんなで、レトロな気分に浸りつつ、野甫島をあとにした。 |