1・プロローグ
うちの奥さんには、大きな(?)人生的目標が2つある。 一つは、霊峰富士山登頂。 とはいえいきなり富士山というのもなんなので、まずは手近な頂から制覇していくべく、わざわざトレッキングシューズなどの登山アイテムを買い揃え、数年前から精力的に本島北部の主要山頂を踏破している彼女であった。 ただ残念なことに、富士登頂のベストシーズンは我々の仕事のベストシーズンでもある。 富士山登頂に比べれば、実現に向けてチャレンジしやすそうななのが、もう一つの目標であるフルマラソン完走だ。 そのためこれまた数年前から、ジョギングは「健康のため」という範囲を超え、フルマラソンを見据えた「トレーニング」に変わった。 沖縄県の主要マラソン大会といえば、誰もが思い浮かべるのが那覇マラソン。県内で最も由緒正しいといっていいマラソン大会なのはみなさんご存知のとおり。 その点、2、3月に開催される沖縄マラソンは日程的には非常に好都合なんだけど、そのコースの起伏の激しさによる艱難辛苦は多くのランナーが語るところ。 …と逡巡しているうちに東京にて「コテン。」開催という運びとなってしまった。 そして。 石垣島マラソン大会。 2010年で8回目を迎えるというこのマラソン大会は、日本陸連公式コースで、その年最初に開催される日本最南端の市民マラソンというのがウリの大会だ。 これは参加するしかない!! うちの奥さんは決めた。 思えばここに至るまでに、気がつけば結局なんやかんや言いながら僕も海洋博のトリムマラソンに参加している。騙されたと思っていくつかの山も登った。 しかし、いくらなんでもフルマラソンともなれば、むしろ最も避けたいものの筆頭といってもいいくらいだ。いくらバカでも騙されたと思って騙されるわけにはいかない。 が、行き先は石垣島。 うちの奥さんを応援がてら、石垣牛を観てマンタを食って………あ、違った、マンタを観て石垣牛を食って、友人たちと再会を果たす、ってのも悪くない。 よ〜し、応援に行こうっと! ………というはずだったのに。 |