22・我に語れ、君の涙のそのわけを

 明けて1月26日。
 前夜の晩餐に続き今朝もまた、ヒサコさんの菜園でスクスク育っている野菜たち盛りだくさんのサラダからベーコンエッグに至るまで、Yさんご夫妻による至れり尽くせりの至福のブレックファースト。
 普段の生活では朝はパン一枚だけの僕には夢のようだ…。

 そうやってのんびり朝を過ごしているところへ、ふくみみ・おーほりが迎えにきてくれた。
 Yさんの車一台では乗り切らないからだ。
 9時半に迎えに来る、といってちゃんと9時半に迎えに来てくれるあたり、さすがプロフェッショナル。11時といいつつ11時15分に来た島P夫妻とは違う。<いえ、けっして島Pを責めているのではなく、一般県民は普通そうだという意味ね。

 この日我々が目指すのは野底マーペー。
 カトちゃんぺの親戚ではない。
 国土地理院的には野底岳と名づけられているものの、一般に野底マーペーと呼ばれている山だ。ハタタテダイのような形をした石垣島の、背びれが延び始めるあたりにある。
 マーペーっていうのは実は人の名前なのだとか。
 この地にまつわる、悲恋の物語の主人公の女性の名だそうだ。

 この野底マーペーのふもと、野底にふくみみ一家のお家がある。

 彼らが引っ越してきてから、彼らのブログや何かでたびたび写真を見たことはあったものの、十年経ってついに初めてお邪魔させてもらった。
 なんだか感慨深い。
 それにしても石垣に住む人たちの家って、なぜにどこもかしこも立派なんだろう??
 土地があるっていいなぁ……。
 毎年夏、この庭でダイビングクラブOB会石垣支部のバーベキュー大会が開催されているという。

 そのふくみみ家の庭から、マーペーさんが見える。


なんとも贅沢な借景!!

 我々は今日、この山頂を目指すのだ!!

 ところでこの山、何かに似てると思いません??
 そう、ムーミンに出てくるおさびし山!!


背景写真撮影:ふくみみ・おーほり

 初めてスナフキンに出会ったムーミンが訊く。

 ムーミン  「君の国はどこ?」
 スナフキン 「故郷は別にないさ。しいて言えば地球かな…」 

 くぅーッ!!かっこいいッ!! 
 そんな吟遊詩人スナフキンのこの名曲を知らぬ人はいまい。
 (ちなみに、作詞は井上ひさし)

 おっとっと、話があらぬ方向へ行ってしまうところだった。
 形はおさびし山にそっくりでも、ここは野底マーペー。
 マーペーさんの悲恋の物語とはいったい??なんで君の名前が山の名に?

 我に語れ、君の涙の そのわけを………。

 ふくみみ・おーほりが語ってくれた。
 昔々、石垣のこの地を開拓するために、黒島から強制的に移民させられた人たちがいたそうな。
 マーペーさんもその移民者たちの一人だったのだけれど、その恋人は黒島に残らなければならなかった。

 今のように安栄観光でピュッと行き来できる時代ではない。
 彼と離れ離れになり、この地で悲嘆に暮れるマーペーさん。
 せめて、せめて故郷の黒島の姿だけでもひと目……。

 そう思いつめ、高く聳える野底の山に単身登ったマーペーさんは、頂上まできてさらなる絶望を味わうのだった。

 そして悲しみのあまり、ついにマーペーさんはその場で岩になってしまったのである………。

 マーペーさんはなぜ頂上まで行って絶望してしまったのか?

 なんで?なんで?ねぇ、どーして??

 「それは、頂上まで登ればわかります」

 うまいッ!!
 さすがエコツアープロフェッショナル!!

 さあ行きましょう!!頂上へ!!

 ……とその前に。
 この野底マーペーにまつわる悲恋の物語が、民謡となってちゃんとこの地に残されているそうだ。
 なんとその民謡を、八重山古典民謡コンクール優秀賞という腕前を持つ我らが三線女王、ふくみみ・のりだーが、みんなの前で披露してくれるという。
 ふくみみツアー、素晴らしいッ!!

 さあみなさん、お聴きあれ!!

 ………といきたいところなんだけど、せっかくデジカメで撮った三線女王ふくみみのりだーのムービー、僕の能力ではサイトにアップできるような小さなファイルに変換することあたわず(涙)。

 お聴きになりたい方は、ふくみみへGO!! 
 おそらく彼女なら、三線で「おさびし山の唄」だって聴かせてくれるはず…。 

 話には聞いていたけれど(あくまでも本人談)、彼女の三線は本当にホンモノだった。
 三線女王の唄を聴いて心を洗われた我々。
 いざ、清い心で山を登りましょう!