26・エピローグ

 「援農」の前に、ちょこっと海辺まで散歩してみた。
 Yさん邸から歩いて
10分ほどのところに、広い広い自然海岸がある。

 普段海辺に住んでいながら、やはりこういうところに来るとうれしい。
 今回石垣に来て、我々が最も海に近寄った瞬間でもあった。

 こんな素敵な海岸があるかと思えば大きな山もあり、川が流れて牛も歩く石垣島は、やっぱり広く大きい。
 海の中に限らず、その自然が育む環境も多種多彩だ。

 我々のような仕事の観点からすると、水納島に無いものがたくさんたくさんある。
 まことにもってうらやましいかぎりである。

 だからといって、うらやましがっていては何も始まらない。
 徒歩で島内すべてを散策しつくせる箱庭のような水納島。それもまた、なかなかに捨てがたい魅力ではないか。
 ないものねだりをすることなく、僕たちはそれをみなさんに伝えていこう。

 我々が乗る飛行機は11時半発だった。
 それに合わせてYさんご夫妻に空港まで送っていただいた。

 到着した際は、翌日のマラソンというゲンジツに打ちひしがれそうになっていたからすべてが重かった風景も、晴れて無事完走し終えた今は、窓外に過ぎ行く景色、振り返る日々すべてが輝かしい。

 そうだった。
 その後楽しいことばかり続いたのですっかり忘れていたけれど、我々は見事にフルマラソンを完走したのだ!!

 一生に一度はフルマラソン完走を……

 うちの奥さんの人生目標のせいで出場する破目になったとはいえ、目標を達成できたヨロコビは出場したからこそ。
 個人的には、昨オフの漢検準一級に続き、またしてもオフの目標達成!!
 誰も褒めてくれないので自分に拍手を送ろうっと。

 あ、そういえば、あれほど懸念していたカカトの痛みは、マラソン中もその後もまったく出ていない。
 マラソン当日までの一週間で完治したのだろうか??
 なんだったんだろう??

 空港にはふくみみ夫妻もわざわざ見送りにきてくれた。
 マーペーがおさびし山に似ている、という話は、実はこのときふくみみ・おーほりに聞いて初めて我々は認識したのである。
 「おさびし山」なんて単語を耳にするのは20年ぶりだ。

 懐かしさのあまり、空港ロビーにもかかわらず「おさびし山の歌」を歌いだす僕。
 モッコシもっくんを抱えながら、ふくみみのりだーは当然のようにジャンジャカジャカジャン…と口ずさみながらエアーギター(?)で伴奏をしてくれた。
 うーん、20年前とまったく変わらないこの空気!!

 ……って、あのぉ、ここ空港なんですけど。

 そろそろ保安検査場を通過しなければならない時刻になった。
 見送りに来てくれている方々以外にも、お礼を言わなければならない方々がたくさんいる。

 島Pは今頃小浜島で働いていることだろう。
 島P夫人カナエ嬢は、今日もまた科学特捜隊基地にいるに違いない。
 Tさんは相変わらず腕立て伏せをしているはず。
 えび屋−Mさんは朝の出荷作業が一段落したころだろうか……。

 親しい人がやたらと多いこの石垣島ほど、我々にとって人と会うのが楽しい島は他にない。
 無沙汰のブランクをまったく感じることなく、こんなに楽しく過ごせたのは、すべて彼ら石垣在住者たちのおかげだ。

 といっても、ただただ昔を懐かしがれるだけじゃない。
 彼らが現在もいろんな方面で、楽しんでいたり頑張っていたりのんびりしていたり奮闘していたりする姿は、おかげさまで我々にはとてもいい刺激になった。
 明日を生きる活力再吸収♪

 みなさん、本当にお世話になりました!!
 島に住んでいると人を見送る機会はたくさんあるんだけど、見送られるのはあまり慣れていない我々である。
 こうして見送ってもらえるとなんだかちょっぴり切ない。

 なるべくクールに去った………つもりでいたら、のりだーとヒサコさんがすぐ後ろまで来てくれていた。
 もう後ろ髪を引かないで!!
 いや、ホントに、ありがとう!!

 今度こそ別れを告げた。

 うーん、石垣島って楽しいなぁ。

 「これを恒例にしよう!」

 Yさんはそう言ってくれるし、もとよりマサカッちゃんは来年も走る気満々だし、ふくみみ・おーほりは、「今度はうちののりだーの料理も食べてくださいよ」と言ってくれるし…………

 ホントに行っちゃうよ!?

 本気を出した我々の図々しさがどれほどのものか、まだまだ彼らは知らない。
 「もう来るな!」
 そう言われるまで、遊びに行こうかなぁ………。

 ちなみに。
 僕はもう、「一生に一度は…」という目標を完遂し、フルマラソンに関してはすっかり満足しているのだけれど、うちの奥さんは違う。
 いつの間にやら、

 「途中歩かずに、文字どおり完走したい」

 と言い出している。
 泣きそうになりながら走っていたくせに、もうすっかり喉もと過ぎて熱さを忘れているのだ。

 彼女に関しては、「次回」がありそうだ。
 僕はもうハーフでいいっす、充分です。
 だって、命を縮めるもの………。
 でもやっぱ、一生のうちで一度は…ということだったら、みなさんにも是非おススメしたい。

 そこのあなた、パソコンの前に座ってる場合じゃないですよ。
 絶対走れないと断言するあなた、まずウォーキングから始めましょう!!

 その一歩一歩の積み重ねが、いつかきっと42.195キロに。

 すべてははじめの一歩から。
 さあみんな、目指せ、フルマラソン完走!!