2・一本の電話
それは昨シーズンも終了間際の、10月中旬のことだった。 「俺もそろそろ齢だからよぉ……」 ん?ついに何か健康を害してしまったのか?? 「最後にパッと海外旅行に連れてってよ」 へ? 「予算は俺が持つからよぉ、全部任せるからどこか手配してくれない?」 海外旅行!? イタリア! ヨーロッパに一度も足を踏み入れたことがないにもかかわらず、日本を捨てて老後を過ごすならポルトガルだ、と勝手に決めていた僕にとって、最も行きたいヨーロッパの国といえばポルトガル。 ついでスペイン(の、名もなき小さな村だか町)。 そしてイタリアは3番手につけていた。 でも我々にとってのヨーロッパは限りなく遠い世界。 そんな僕たちに、振って湧いたかのようなこの話!! (有)クロワッサンアイランド緊急役員会が、満場一致で父ちゃんの申し出を承ったのはいうまでもない。 もちろん行き先はイタ〜リア♪(エジプトにしていたらやばかった) とはいえイタリアといっても広うござんす。 ではイタリアのどこに? そりゃもちろん、僕にとってのイタリアといえば、これ!! あえてイタリア語のタイトルだけど、この絵ですぐさま頭にあの音楽が流れたあなたには、きっとおわかりいただけることでしょう。 それほど映画に関心がない方からすると、同じ映画を何度も観るというのは不思議でならないらしい。 お気に入りの歌とか音楽だって、何度も聴くでしょう? 僕にとっての「いい映画」ってのはまさにそれと同じ。 ストーリーの面白さはもちろんながら、そこで演じている役者たちの入魂の演技、そこで演出している監督の感性、撮影監督の職人ワザなどなど、観れば観るほど面白さは増していく。 そんな僕にとっての「いい映画」のひとつが、ほかでもない「ゴッドファーザー」なのである。 カラヴァッジョの絵のような、完璧な光と影の映像から始まるあの冒頭。最初にアップで出てくる人物がただの葬儀屋のオッサンってところがまたニクイ。 いやあもう、マーロン・ブランド最高。 …といいつつ、全3作あるゴッドファーザーシリーズの中で、僕が最も好きなのがパートU。それも、若き日のビトを演じるロバート・デ・ニーロのパート。 そして!!
もう、オチッコちびりそう………。 何度観てもふるえる。 シチリア!!
このシーンから、あのエンニオ・モリコーネの名曲が流れる。
初めてゴッドファーザーを観た子供の頃、シチリアなんて今の感覚でいう火星くらいに遠いところって思っていた気がする。 そんなシチリアに………………行けるかもしれない。 僕にとってこれは、過去に味わったアラスカのオーロラやケニアのゾウさんに匹敵する、人生的エポックメイキングな話であることは間違いない。 ……シチリアに行きたいッ!! …でも、どこに行ったらいいんだろ? |