3・夢の現地ツアー
シチリアに行きたい、というおぼろげな僕の希望は、父ちゃんの電話を受けたその日の晩にほぼ決まっていた。 ひとくちに九州って言っても、宮崎でシーガイアで遊ぶのと鉄輪で温泉に浸かるのと長崎を巡るのとではまったく違うように、シチリアの中のどこに行くのかというのは、かなり重要な選択肢だ。 なにしろ僕にとってのシチリアといえば「ゴッドファーザー」だけなのに、あの雰囲気を味わうためにはどこに行けばいいのか、それどころか、実際に今もあの雰囲気を味わえる世界なのかどうかすらわからない。 父ちゃんから驚きの電話があった夜、たまたま島にご滞在中だったゲストは北のマスターで、彼もその昔シチリアに行ったことがあるという。 あの映画でエンゾ@ジャン・レノがアッハッハァと仁王立ちしていた海こそが、タオルミーナなのである。 たしかにあの映画のジャン・レノはカッコよかった。 ところで。 「パットン大戦車軍団」(原題「 Patton」)第2次世界大戦における名将軍ジョージ・パットンの伝記映画で、田舎出の豪快なオッサンをジョージ・C ・スコットが見事に演じ、その年のアカデミー主演男優賞を獲得。ところが「あれは演技などと言うものではない」という一言を残して受賞を辞退したという、パットン将軍に勝るとも劣らぬ変人エピソードが残っている。 紅顔の美少年当時、プラモデルから入ったミリタリー少年だった僕は大の戦争映画ファンで、このパットン大戦車軍団も当然のように日曜洋画劇場か水曜ロードショーか月曜か金曜か忘れたけど観た。 撮影に使われている戦車が大戦中の戦車ではないというあたりが、プラモデルから入ったミリタリー少年にはやや不満だったものの、劇中で最も印象に残った土地の名、それこそが シチリア!! そして、政治的配慮でイギリスのモンゴメリーに華を持たせようとするアイクの思惑に真っ向勝負するかのように、誰よりも先にメッシーナに到達したのがパットン将軍。 パレルモ!! なのである。 というわけで、シチリアの行き先として真っ先に思いついたのはパレルモなのだった。 そこまでが、父ちゃんからの電話を受けた夜の話。 その時、ふと思いついた。 なんとなんと!! なんと「コルレオーネ村」は実在の村だったのだ!! これは是非とも行かねばッ!! ……と思ったら。 すると…… なんと!! しかも!!(……って、ビックリマークばっかりで申し訳ないけど、ホントにこのときの僕はビックリマークの連続だったのだから仕方がない。) タオルミーナに滞在している観光客を対象に、まるで夢のようなツアーが現地に存在しているではないか。 専用車で訪ねるゴッドファーザーロケ地めぐり 行く行く、行きますワタシッ!! 誰も見てないのにパソコンの前で手を挙げて宣言し、旅行のベクトルは急速に定まり始めた。 目指せタオルミーナ!!
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