22・イゾラ・ベッラへの道
ホテルに戻り、ここでヒロセさんやアントニオとお別れだ。 そう、父ちゃんはすっかりゴキゲンになっていたのだった。 というわけで、いいコンコロもちになって昼寝をご所望の父ちゃんを部屋に残し、我々は今日もまたテクテク散歩することにした。 LIBERTA! 午後の散歩には目的があった。 Isola bella、すなわち美しい島というのは、タオルミーナの海岸にその島ありと謳われる景勝地。 夏ともなれば大勢の海水浴客で賑わうタオルミーナの、シンボル的な存在だ。 また、映画「グランブルー」のロケ地としても知られている。 タオルミーナの街は山の中腹に張り付くように広がっているため、そのイゾラ・ベッラまで行くには山を降りることになる。 が。 そんな便利なルートの存在を、旅行準備段階で僕は知ることができていた。 イオニア海タッチができる!! 僕はかつてアレキサンドリアで地中海タッチをしたことがあったけど、うちの奥さんは初地中海。 てなわけで、散歩開始! まず、ホテルからベルベデーレ(きれいな眺め)と呼ばれている展望台を目指す。 そこを目指していると、途中にあるのが ビザンチン時代の墓。 この石積みの構造物は、もともとはギリシア・ローマ時代のこのタオルミーナの町の城壁だったものなのだとか。 そのすぐ先に……… ベルベデーレポイントが。 西風が強くて海はかなり波立ってはいたものの、この風景。 このイソラ・ベッラへの道は、このベルベデーレ展望台のすぐ脇から続く階段がスタート地点だ。 レンガや石を埋め込んだ石畳の階段が続く もちろん途中途中で景色も楽しめる 周囲に木々が生い茂る場所も シーズン中、いったいどれくらいの人々がここを通るのだろう? そんな階段沿いには、かわいい草花が慎ましやかに咲いていた。
花だけではない。 シチリアのトカゲ!! Che bella!! なのだった。 まぁしかし、この地を訪れる観光客は数多けれど、こんなところでトカゲの写真を撮ろうと頑張ってる人は少なかろう。 階段が終わるとすぐに幹線道路に出る。 イソラ・ベッラ!! このところずっと時化ていたのとおりからの西風があいまって、海は冬の水納島もかくやというほどに荒れていた。 初イオニア海タッチ!!! ……しまった、ムービーでしか撮ってないから画像がない。 というか、せっかくここまで降りてきていながら、写真がこの一枚だけしかないってのはどうなのよ。 まぁ、写真なんてそうそうパチパチ撮るもんじゃないし<あんたさっきまで花やトカゲはさんざん撮ってたじゃないか!! ま、価値観のモンダイってことで。 そこらじゅうイゾラ・ベッラだらけだものなぁ……。 夏になれば賑わうのであろう海の家のベンチに座り、しばし波見をしてみた。 ところで。 夕食の予約をするのに何をたいそうに……と思われるのも無理はない。 となると、予約をせねば。 これまでは、対面会話だったからこそカタコトでもなんとかこなせてきた。が、電話となれば、コミュニケーション手段は言葉しかない。 夕べのうちに携帯電話のナゾは解けていたので、この日ついに初使用。 pronto. …から始まった緊張の一瞬。 …そんな心配はまったくの杞憂だった。 なにしろ、予約したいんだけど…と一言でも言おうものなら、 オッケー、カモーン、バッチこーいッ!!いつでもいいよ!! みたいな感じで、一言で済むはずの言葉を矢継ぎ早に言ってくれるので、たとえ聞き取れなくても、雰囲気で意味が伝わってくる。 ああ、これがイタリア……。<………なのか? ともかくそんなわけで、何時に来るの?と訊かれれば何時から開くのですか?と聞き返せもしたりして、今夜7時半から3名で、という予約を完璧にこなせたのだった。 フフフ………ワタシもやるときはやるのだ。 イゾラ・ベッラの波も、にぎやかに歓声を送ってくれていた。 |