39・慰めのCYGNUS
しばらく海辺で遊んだ後、特に何があるでもないマリーナ広場周辺を歩いていると、鉄軌道跡を発見。 チンチン電車か? もはやチンチン電車など走っていられる余地がなさそうな現在のパレルモの道を歩いていると、歩いている人々も車を運転している人たちも、やはりみながみな自立しているように見える。 そんな街では犬も自立している。 そうやってテキトーにプラプラテクテクしつつ、再び街の中心へ。 ブティックだったか、オシャレなお店の前で地図を広げつつ、脳内白地図状態のうちの奥さんと(結局彼女は、ホテルから歩いて5分ほどの場所にいてさえ、ホテルその他それぞれの位置を把握しきれなかった)このへんかなぁと見当をつけていると、店員なのか客なのか、そのお店から女性が二人出てきた。 やはり二人がかりで一生懸命、そして楽しげに教えてくれるのだった。 ありがとう! 「 Prego!」ホントにもう、ここは grazie pregoの国だ。このときのおねーさまたちは、仕事柄か装いがいささかケバかったものの、道を歩く勤め人らしき女性たちは、世代を問わずとにかくみんな不二子ちゃんみたいでカッコイイ。 背筋まっすぐ、姿勢バッチシ、いささかの隙も見せず、颯爽と歩いている。 それが週末ともなるとみんなお休みだからか、たいていこんな感じ。 細いのにお尻だけボンッ!! 日本人旅行者から見るイタリアといえば、とかくイケメンばかりで女性に優しい男性ばっかり!!ということで女性に人気が高く、逆に「優しくされない…」と拗ねている男性旅行者もいるようだけど、どうしてどうして……… シチリアの女性はみんなカッコイイし、みんな優しい!! ともすればその優しさは、姉御的優しさに通ずるものがあるかもしれない。そういうのがけっして嫌いではない僕にとっては、誰も彼もが素敵に見えた。 ヴッチリア市場に入ってみると、午後遅いので市場はあらかた終了していたものの、この時間からスタートするものもあった。 市場を通り抜けると、昨日ジェラートを食べたジェラテリアがあるサン・ドメニコ広場。そこに花屋さんがあった。 いくつか買った野菜のうち、超ロングサイズのズッキーニが非常に気になる………。 バーベキュータイムが始まるまでにはまだ時間がありそうだったから、その前にカフェに寄ってエスプレッソを飲んでみることにした。 お店で初めてカフェを頼んでみた♪ 我々が普通にコーヒーといって飲んでいるものは、こちらではカフェ・アメリカーナになる。 だからカメリエーレ氏は、「アメリカーナ?ロマーナ?どっちのコーヒーですか?」と訊ねてくる。 さすが老舗、驚いたことに、水がサービスでついてくる! でも値段もさすが老舗、やや高い。 店内にもちゃんと席はあるものの、このホコテン通りを行く不二子ちゃんたちを眺めているのが楽しかったので、寒さこらえて外で飲んでいる我々。 ただ、この日は土曜日ということもあってか、オシャレなお店が多い新市街のこの通りには、学生っぽい若い子たちも多かった。 ややバカっぽい。 ほどよい時間になったので、再び市場に行ってみた。 先へ行くと、例の広場だ。 ヒョーッ!!美味そーッ!! この市場の屋台で、是非食べたいものが我々にはあった。 聞くところによると、それはヤギの腸であるとか。 あった!! チョーッ♪ 「 Si,si! スティギオーレ!!」 いわゆるフツーのバーベキューネタじゃなく、スティギオーレに目をつけてくれたことがうれしかった……ような顔をしつつ応えてくれた店主。 「あいよ!」 やがて肉が焼けた。 ビールがうめぃ………。 レモンをたっぷり絞っていただく肉は、こんな感じ。 途中で撮ったので残骸っぽく写ってしまった……。 <……って、そんなの食べていいんですか? パンに挟んで食べる食べ方もあるようだったけど、パンまで食べると腹が膨れすぎるので、肉だけで我慢。 網の上で焼かれている肉の量を見て、そんなに焼いちゃって、このあと人来るのかなぁと余計なお世話的心配をしていたところ、やがて観光客も地元の人も、たくさん集まり始めた。 楊枝で肉を食べながら、お話に高じる地元のオジサマ二人。 彼らが顔見知りであるという保証はない……。 すでにあたりにはモウモウと煙が立ち込めていた。 市場の通りとはいえ、周囲にはアパートがたくさんある。毎日これじゃあ、あらゆるものが焼肉臭になりそうな気が……。 日が暮れるにつれますます繁盛しているバーベキュー屋台。 日中にはなかったこの屋台、これは……ひょっとして? まず間違いないだろう、ポルポお兄さん(昔はオジサンだったそうなのだが、先代の跡を息子が継いでいるらしい)の屋台だ。 水納島のタコ獲り大将リョウセイさんも、獲ったタコをただ本島の刺身屋、料理屋に売るだけじゃなく、こうして手軽に食べられる調理をして出せば、ビールも飛ぶように売れるだろうになぁ……。 新鮮な食材は、シンプルな調理でこそ真の実力を見せつける。 だったら!! 実に魅力的な計画。 タコお兄さんよ、また来る日まで!! その後乾物屋で2種類のボッタルガを購入。 店主らしき方がなにやらアヤシゲな雰囲気を醸し出す一方で、若い陽気な店員さんは、我々にオリーブを試食させてくれた。 このボッタルガ、 tonnoはわかったけど、もう1つの魚種名の日本名がわからなかった。どんな魚だと一生懸命店主も店員さんも説明してくれるものの(やっぱり二人がかり)、光物、すなわち青物系であることまでしかわからない。 が、帰国後、どうやらそれはボラだったことが判明。 その後テケテケマクエダ通りに戻ると、昼間とはなんだか様子が違っていた。 夜店が出ていて、路上は人通りがやけに多い。 上の写真なんて、まるで広場のように見えるけど、路上ですぜ。 ほぉ…。 どうやらこのメインストリート一帯が歩行者天国になっているようだ。 はてなんだろう?? その開催が違法なのかなんなのか、警察のチェックを受けていた演者たち。ところが演者は完全に警察を無視、もしくはカンケーネー的なMCをしていたのか、集まっている人々も盛り上がっていた。 にしても、週末にここが歩行者天国になるだなんて、ワタシまったく何も知らなかったんですけど……。 我々もお楽しみタイムにしたかったところながら…………。 部屋に戻ると、死亡状態からは回復していた父ちゃんだったものの、「外に食べに行っても大丈夫だよ…」という言葉をそのまま信じるわけにはいかなかったので、今宵は無理せず、またしても部屋食。 つまり!! 「まぁ、しょうがないじゃん」 うちの奥さんはそういって気軽に慰めてくれるものの、そりゃ1ミリもそういったことに時間を費やさなかった脳内白地図状態の人なら、「しょうがない」で簡単に済ませられるわなぁ……。 というわけで、今宵もチーブスのお世話に。 ドライバー・レナートが、パレルモは赤ワインが美味しいと教えてくれたこともあって、チーブスではレジのお兄さんに、地元の赤ワインのオススメを訪ねてみた。すると、 「全部ですよ♪」 オチャメなレジのお兄さん。 だったらこれですね!と彼が指差してくれたものは、22ユーロぐらい。 「そうすると、そこにあるシグナスがいいですよ!」 12.5ユーロ。 気になるお味は…… 美味しッ!! 僕が勝手に甲州ワイン系と決めたパトリアの若い赤ワインとは違って、思わず肉を食べたくなるこの味こそが、僕が常日頃赤ワインに求めている味だ。 「うちの近所の酒屋で1000円で売ってるよ」 なんて言われたら身もフタもないから、そういう情報はシャットアウトでお願いいたします……。 思いもかけぬ2晩連続のボードテーブルディナーには、残念ながら血の滴るような肉料理は欠片もなかったものの、今宵の個人的目玉、モッツァレラチーズ(水牛のヤツ)がまた美味くて美味くて、それにピッタリマッチしていた(ように思えた)。 シグナスちゃんは、優しく僕の「徒労」を慰めてくれたのだった。 今宵すべてを飲み干せずとも、この先しばらく、毎夕食後に部屋でおつきあいできるかな……シグナスちゃん。 …と楽しみにしていたのに!! 「寝られねぇジージ」が、その後あっという間に朝酒で空けてしまいやがった!!<まだ飲んでんのか!! どうせだったらウンとジョートーなヤツを買えばよかったかな、と思わないでもなかった今宵だったのだが、結果的には正解だったみたい……。 こうして、パレルモ最後の夜は更けていった。 ウロコムシ武田さんが、いつもお一人で旅に出る意味を……。 |