41・さらばパレルモ
散歩を堪能した父ちゃんをその後ホテルに戻し、我々はもう少し未練がましく街を歩いてみた。 最後にジェラートを! 朝アランチーノを買ったお店には、色とりどりのジェラートもオシャレに美しく並んでいたので、うちの奥さんがひそかに目をつけていたのだ。 一昨日はパンに挟んで食べたら量が多すぎたので、コーンで。 たしかに、一昨日食べたピスタキオよりも色が濃い。 でもやっぱり多いッ!! ジェラートといえばこの量が当たり前のイタリア人が、日本のアイスクリーム屋で何か注文したら、即座にちゃぶ台返しになることは間違いない………。 そのどでかいジェラートを、歩きながら食べる。 シチリアのお菓子といえば脳天直撃系の甘いものが多いと言われるなかにあって、このジェラートはけっして甘すぎることはなく、むしろ夏の暑い時期に食べるにふさわしい爽やか系。 晴れ渡る空の下、ポリテアーマ劇場の前で。 かなり食べてまだこの量が残ってる……。 爽やかなジェラートには青空が似合う。 ホテルの目の前にあるこのポリテアーマ劇場は、それはそれで由緒正しい大きな劇場なのだが、すぐ近くにさらに巨大なマッシモ劇場があるためにやや影が薄い。 いやがらせ?? ともかくどちらも、今もなお現役の劇場だ。 たった3泊しかしていないのに、すっかり見慣れた感のあるパレルモの街。 居心地がいい♪ この、まったく違和感を感じない居心地の良さはいったいなんだ?? ホテルに戻り、チェックアウトを済ませてロビーで待っていると、予定時刻どおりにタクシー到着。 パレルモの空港へは車で30分ほどだとドライバーが教えてくれた。 こんなところを高速道路が走っているってのも、台風が来る風土で暮らしている我々には信じがたい光景だ。 この反対側には、岩山が巨大な屏風のように迫る。 ここで約一名、不穏な気配を漂わせている人が。 ま、まさか………父ちゃんの次はうちの奥さん?? 3日連続部屋で夕食だなんて冗談ではない。 「だって、チョコラータは甘くって、ジェラートは多かったんだもん……」 知らんがな。 空港に着いた。 そして、ちゃんとした近代建築のターミナルにもかかわらず、なぜかターミナルの中に…… ハトがいた。 到着早々にチェックインを済ませ、荷物から解放されたあと、まだけっこう時間があったので空港内を物色。 ここのお菓子が美味しいの♪ シュークリームのような雰囲気のナポリのお菓子、スフォリアテッラというものに惹かれてしまったので、1個だけ買ってみる。 1ユーロ。 で、先ほどのオネーサンに、またもう1個お願いします! すると、僕の前に買い物をしていたCAらしき女性が、 「これも美味しいわよ!」 そう言ってショーケースの中を指差してくれた。 へぇ!そうなんですか?とお店のおねーさんに言うと、 「はい!とっても美味しいですよ♪」 お店の方はともかくとして、この見ず知らずのアヤシゲな東洋人旅行者に、お客さんが自分の好きなお菓子を勧めてくれる。 それを遠目に見ていたうちの奥さんもまた、このとき確信したのだった。 イタリアの女性は男に優しい!! ひょっとして、これもまたイタリア語の効用なんじゃなかろうか。 彼らに優しく接しようとするのは、その国の人にとっては至極当然の人情なのではあるまいか。 バリバリの英語のみでイタリア旅行をしている男性に、そのあたりのことをうかがってみたいなぁ…。 結局僕は、せっかく勧めていただいたものを買わなかったのだけど、後刻うちの奥さんがそれを責め立てる。 「せっかくおねーさんたちが勧めてくれたんだから、買わなきゃ!まったく、女心がわかってないねぇ」 ……ってあんた。 そういう不安要素が購買意欲を削いでいるってことがなぜわからんのだ。 ともかくスフォリアテッラは、父ちゃんにも好評だった。 保安検査を通過してボーディングゲートの前にやってきた後、バールでビールを買って、朝方カフェ・スピンナートでテイクアウトしてあったアランチーノを。 ようやく搭乗時間に。 飛行機のお尻!! ついにパレルモと分かれる時が。 奇跡的にあるかもしれない「次回」に備えて、もっともっとイタリア語を勉強しておこうっと。 さらばパレルモ、また来る日まで!! |