21・
2月1日〜2日
深夜の恐怖 今宵もタスカービールで乾杯し、豪華かつ目のご馳走的美しいディナーに舌鼓をポンッ!と打つ。 「タスカービール?」 と訊いてきてくれる。 「タスカーがいい」 という。 「タスカー」 誰もがそう応えた。 さて、今宵のディナーにもまたアトラクションが用意されていた。 なんだか楽しそうな陽気な歌だ。 そして例によって、舞台から彼らはフェードアウトしてアトラクションは終った。 いいコンコロモチになりつつ、スペシャルデザートを食べ、シメの珈琲を飲んで席を立った。 「トゥナリ ケショ」 ニコッと微笑んでそう教えてくれた。 その夜のこと。 いずれにしても、翌朝の予定が早いこともあって、11時以降は爆睡しているから電気があろうとなかろうとあまり関係はない。 この夜、いつものように今日一日の満足感をたっぷり噛みしめてから床についた。ああ、今日もいい一日だった……。 そして草木も眠る丑三つ時。 ガサガサガサガサガサ……ゴソ……ガサガサガサガサ……ゴソ……ガサ…ゴソ…ガサガサ… 戦慄が走った。 ナニモノって何!? あ!! もしかして、もしかして……バブーン?? ナイロビの屈強な黒人さんにも、サバンナのライオンにも何もされなかったというのに、こんなベッドの上でサルに襲われたりしたら目も当てられない。 相変わらず、ガサガサゴソゴソ……という音が断続的に続いている。 バンッ!! シーン…………。 静寂。 ガサ……ガサ……ガサガサガサガサガサガサガサガサ…… また始まった。 バンッ!! シーン……… ガサ……ガサ……ガサガサガサガサガサガサガサガサ…… バンッ!! シーン……… ガサ……ガサ……ガサガサガサガサガサガサガサガサ…… お、おのれサルめ!! ウリャッ!! …とばかりに枕元の懐中電灯を点け、音のするほうに向けた。 すると……… チョロチョロチョロチョロチョロチョロ………………と、慌ててカーテンを登っていく小さな影が見えた。 あ!! ネズミだ!! ネズミだったのだ!! それにしてもネズミめ、いったい何をしていたのだ? アアッ!! サ、サーターアンダギーが!! 姫、ハツおばさん、あのサーターアンダギーはケニアの人たちだけでなく、アフリカのネズミにも大好評だったよ………。 鏡台の上に無防備に置いてあったために被害に遭ったのだろう。油で揚げてあるから、相当おいしそうなニオイを発していたに違いない……。 この見えざる敵チュー太郎は、その後一時なりを潜めたものの、数日後にまた別のところから音を発し始めた。今度はガサガサ……というよりは、明らかにガリゴリ…という音である。 まさか、いくら何があっても起きないといっても、食われたまま眠り続けるはずはなかろう。 CHU!! タンスの引き出しの奥に入りこんだはいいけれど、引き出しを閉められてしまって出るに出られなくなっていたチュー太郎が、引き出しの奥で「?」という顔をしてじっとしていた。 なんとまぁ………かわいいこと!! その瞳に乾杯、君の罪はすべて許してあげよう……。 ああ、ナイロビからはるばるやってきたマンゴーよ……。 サーターアンダギーとマンゴーという、よもやのご馳走に味をしめたチュー太郎、ひょっとすると我々が去ったあとも、毎夜のごとく闖入しているかもしれない。 |