ハウスリーフの何がいいのか
今回の旅行では、中7日間で13本潜った。
日本人ダイバーの平均からするときっと少ないに違いない。
でも一本あたり90分近く潜っていると、2本潜って3時間海中にいるわけだからもうそれで充分なのだ。夕方はビールタイムだしね。
13本のうち9本がハウスリーフである。
いったい、ハウスリーフの何がいいのか。
ボートで行くポイントの方が圧倒的に魚は多いし、意外な大物に出会うチャンスも多い。
そういったポイントもたしかにおもしろいんだけれども、一回こっきりしか行かないとなると、なかなか思うようにじっくり潜れないし写真なんて撮ってられないのである。
もうちょっと行ったら何かいるかな、どうかな、なんてついついファンダイビング状態になってしまって、オタオタオタオタしている間に一本終わってしまうのだ。しかもボートダイビングでは60分一本勝負なので、さあこれから、というときに上がらなければならない。落ち着いて写真を撮ったり観察したりできない。
その点ハウスリーフだと、ヴィラメンドゥの場合、一日に何度でも好きなときに、残圧50、2時間以内、という制限内で自由に潜れるから、一度潜ってだいたいの感覚をつかみ、あとは段取りをたててゆっくりと潜ることができるのである。
もちろん、だからボートは必要ない、と思っているわけではないけれど、潜るのはもっぱらハウスリーフ、と当初から決めていたのであった。
小物王国モルディブ?
僕がじっくり写真を撮りたい、と思っていたのは先にも述べたようにまずはハナダイ類、そして今やすっかりメジャーとなったモルディブの共生ハゼたち。
あとはインド洋ならではのお魚さんたちや、日本にもいるけれども水納島じゃなかなか撮れない(つまり近寄れない)ヤツら、エトセトラ……であった。
うちの奥さんはといえば、ご存じのとおりエビカニオタクであるからいうまでもない。
それら以外に関しては、もう手当たり次第、行き当たりバッタリ、という予定?だった。あまり欲張って結局どれも満足に撮れなかった、といういつものパターンにはまらないようにしたい。
さて、旅日記にもあるとおり、エバンスは事前にスノーケリングで見つけていたし、砂地で簡単に見つけられると聞いていたオーロラゴビー(写真左)とかドラキュラゴビー(写真右)とかもウワサ通りすぐに見つかった。オーロラゴビーなどはそこら中にウジャウジャいた。
このドラキュラゴビー、インド洋版ネジリンボウとして今や知らない人がいないくらいメジャーになっているけれど、何を隠そう、日本の一般誌で生態写真を最初に紹介したのはきっと僕なのである(写真はうちの奥さんのだったが…)。
当時勤めていた観賞魚雑誌で、無理矢理モルディブ特集をした次第。ただし、海水魚にはあまり力を入れていない観賞魚雑誌であったため、なんの反響もなかったけど……。
当時はドラキュラゴビーという名のハゼがいることは知っていたのだけれど、それがネジリンボウみたいなやつだったとは知らず、帰ってから標本ばかりのモルディブのお魚図鑑を鳥羽のタコ氏に買ってもらってようやく知るにおよんだ。
ちなみに、水納島にたくさんいるヤシャハゼ、夜叉とはまた空恐ろしい名前だけれど、ある研究者がこのドラキュラに対抗して和名をつけたのだという。和名に知恵を凝らしたためか、いまだにヤシャハゼには学名が付いていない。 ※追記…現在はyasyaという立派な種小名が付いています。
バンドスではほかにトールフィンゴビー(と思われるヤツ)も見つけていて、当時は何を調べてもどこにも載っていなかったのでさっぱりわからなかったものだ。
それを考えると、たった7年余とはいいながら隔世の感がある。今やモルディブでも多くの人が小物を見て喜ぶようになっているのだ。
笑ってしまったことに、このハウスリーフに潜っていたとき、ヨーロピアンガイドの仕事ぶりを目にしたのだが、なんとなんと、根の奥底にいるソリハシコモンエビのクリーニングをガイドしているではないか!!
信じられない思いであった。ちなみに引率されていたヨーロピアンゲストのうちの二人ほどは、互いに顔を見合わせて両手を広げながら首をひねるポーズをしていた。そりゃそうだろうなぁ。
このダイビングセンター前は水納島の砂地のポイントのリーフの高さを少しだけ高くしたような感じのところで、砂地にはチンアナゴとスパゲティイールという2種類のガーデンイールがいたり、点在する根にはハナダイ類が群れていたりという具合であった。
砂地には共生ハゼもたくさんいて、ドラキュラゴビーやオーロラゴビーのほか、ブラックシュリンプゴビーと思われるヤツ、ファンシュリンプゴビー、あと忘れちゃならないのがトールフィンゴビーなどなどがいる。
このうちトールフィンゴビーだけはついに見ることができなかった。熱心に探さなかったんだけど……。
魚・魚・魚ばかりで僕はギョギョギョと驚いた
リーフ際には小魚はそれほど群れておらず、各種スズメダイが目立つ程度だったがとにかく魚は多い。各種チョウチョウウオ、ヤッコ、グルクン類、ガーラ類などなど。アデヤッコなんていつでも見られるし、カスミアジなんかはいるのが当たり前になってしまった。かえってから水納島で潜ったら愕然としそうで恐い。
アジといえば、桟橋に停めてあるドーニの下あたりを中心として、ギンガメアジの玉が常駐していた。係留用のロープが写真的には邪魔だったけれど、とにかくいつ潜っても必ずいるギンガメアジというのはうらやましいかぎりだ。きっと漁獲がなければ簡単に増えるのだろうなぁ。水納島だって毎年15センチくらいの若魚が10匹ほどビーチ内で群れるもの。
簡単に増えるのだろうなぁ、と思ったのはヨスジフエダイもそうで、桟橋下に群れていたのをはじめ、ボートで行った各ポイントにもわんさか群れていた。放っておけばどこでも増えるに違いない。沖縄でも昔はどこにでもいて大した値が付かない安魚であったらしいが、今や唐揚げが一匹750円もする(於:丸市ミート)美味な高級魚である。そのため、どこでも簡単に釣られてすぐに減ってしまうのだ。
イソマグロも単体ながら巨大なヤツがリーフ際を時折通過していた。これくらいの巨体を養えるだけの生産力があるのだろう。
いわゆる大物系でいうと、そのほか2mくらいのネムリブカ、タイマイ、ナポレオンなどそれぞれ一回ずつ目にした。ウワサのマンタやジンベイザメは見なかったけれど、別に僕らはこれらが目的ではないので、いたらうれしいけれどいないからといって落胆はしない。 |