1月23日
34・鳥羽水族館 タコ主任の住む寮は、もともと旅館だったところなので部屋数が多い。 「カルシファーの声を演っている我集院達也って若人あきらなんよ」 うーむ……。酔っ払っているとはいえ、四十を前にした男の会話ではない……。 翌朝。 せっかくなので水族館に行くことにした。 池袋のサンシャイン国際水族館のように、買い物のついでに水族館へ…ということでもあれば客としても何度も足を運びやすい。ところが鳥羽には水族館以外には真珠しかない。いまどき真珠島まで遥かな道のりを好きこのんでやって来るのはガマクジラくらいだろう。<いまどきではないんじゃ……? だからお客さんを呼ぶために、ついついインパクトの強い生き物に頼ってしまいたくなるわけである。もう随分前になるが、沖縄のマンタ捕獲問題で鳥羽水族館が大タタキに叩かれたのもそういう事情があるのだろう。 館内に緊張が走った。 「よぉー!!○○君?いやあ、OBの●●だけどさ、近くまで来たから顔でも見てこーと思ってさー。今大丈夫?」 クラブの大先輩なのであった。それも、仕事で鳥羽近辺に来たのでついでに後輩が勤めている水族館に遊びに来ただけの……(ちなみにその先輩は、先だっての新年会にお越しになっていた)。 この日を境に鳥羽水族館は変わった。<ホントか? 職員にマニアがいる!! いやホント、隅々にまで手がこんでいるのだ。それも、ジュゴンだラッコだと喜ぶお客さんにはけっして気づいてもらえないようなところで…。 具体的にいうとキリがないのでひとつだけ言うと、僕は生きているイセエビのフィロゾーマ幼生なんて初めて見た。こんな面白い生き物なのに、普通の人は「何もいないやぁ…」で通り過ぎますぜ! タコ主任といえば、最近リニューアルしたエントリーゾーンのサンゴ水槽(ホントに生きてるサンゴの水槽)も担当しているらしい。 タコ主任も頑張っているようだ。 水族館でのマニアックな仕事というのは、短期的に見ると費用対効果という意味でかなり分が悪い。でも、長期的に見ると、それらが少しずつ効いてきて、思いも寄らない効果を生み出すかもしれない。 楽しいといえば、鳥羽水族館にこのたびバカが来た。
アヤメちゃんはサツマイモが大好きなのだという。 最近の水族館では流行なのだろうか、サンシャインにもいたペリカンがここ鳥羽にもいた。 これが面白いのなんの。 ペリカンも面白いんだけど、それを観てワーワーキャーキャー、逃げ惑いつつも近くから見たい……だけどコワイ、そんなお客さんたちの様子が傑作。ペリカンなんて特段珍しい生き物ではないと思っていた僕は、ラッコどころではないペリカンのスターぶりに驚いてしまった。 うちの奥さんはといえば…… すっかり観客になっていたのだった。
本来のお客様をさしおいて何をやっているのだって感じだが、実際お客さんの中でこんなに近づける人はいなかった。 「ペリカン欲しい……」 言うと思った。どこで飼うというのだ? とまぁ、こんな具合にいろいろ楽しめる。 ここ数年鳥羽水族館に行ったことがない方、随分よい方向に進化しているので是非一度足をお運びください。 |