7・前夜祭
約束の6時が迫っていた。 さあ、ロビーで集合!! 本来であればここにブク嬢がいないはずはないのだが、そこはそれ、さすがに結婚式前夜に花嫁が飲んだくれるわけにはいかない。 そんな花嫁の苦労はそっちのけで、すでに胃袋が満を持している状態の我々はいざ出発!! さあて、今宵まずどこから攻めるのか。 しかし我々は!! ……といいつつ、やがて判明するのだが、案外地元の人って中華街に詳しくないだけっつう話もあるのだった。 リーダーの今宵のスペシャルツアーの予定は、まずは腹ごしらえでたんと食い、しかるのちに河岸を変えてたんと飲む、というものであるらしい。 その名も三陽!! おおっ………こ、これは!! その店内ときたら…… せ……狭いッ!! 「チベット」 という看板が掲げられているのだ。つまり奥地も奥地の秘境ってこと? しかし!! 「ここの餃子が美味いんですよ!」 というリーダーお勧めの餃子が登場!! これがもう、美味いのなんの!! そのほか、ねぎや鶏肉の炒め物も抜群。庶民の中華炸裂ってところだ。 「おめでとう!じゃあ、スペシャルサービス!!」 なんだろう? スペシャルサービスをしてもらい、満面の笑みのリーダー 焼きそばのことではない。 そう、この店の大将はお茶目さんなのである。 楊貴妃も腰を抜かす ギャルのアイドル チンチン麺 などのほか、毛沢東や周恩来まで出てきては腰を抜かしたりビックリしたりするメニューが看板にデデンと掲げられているのだ。はたしてそれを見て味を想像できる人がいるのだろうか?チョメチョメ麺っていったいなんなんだ?? いやあ、本当に食った。 腹を満たした後は、酒を飲みに行く。 三陽からチョコチョコっと歩いて行けるところにそのお店はあった。 無頼船(ぶらいせん)というお店だ。 ……って、リーダー、このキープボトル、日付が昨日になってますけど?しかもボトルには、ブク嬢の落書もあるじゃないですか!? 「いやあ、昨日来てキープしたんですよねぇ…」 一週間前から禁酒じゃなかったの?? 「あれ!?あれ???こんなに飲んだっけかなぁ……」 二人で一晩でこれだけ飲むなんて……恐るべしごっくん隊。 あれ?? 「いやあ、僕も式場のカメラマンから、前日飲むと顔がむくむからあんまり飲むなって言われてるんですよねぇ……」 などと言って当初は控えめだったリーダーも、そこはごっくん隊である。控えめにしてなお、常人の3倍の量なのだ。 さて、この無頼船、海が大好きなマスター・次郎さんのお店である。 そういうお店で、いつものようにやいのやいのと飲んでいると、ツマミが出てきた。 これが美味い!! いいなぁ、あの生ハム。 ああ、残念だ、削いでみたかったなぁ………。 そうこうするうちに時計の針はいつの間にか12時を過ぎていた。楽しいひとときというのは瞬く間に過ぎていくものだ。 というわけで、リーダーは明日もあることだしこのへんでお開きにして、タクシーに乗った隊長、オチアイ、うちの奥さん、そして僕の4人々はホテルに降り立った。 一人駄々をこねる僕。 その先のことはあまり覚えていない…………。 足取りも軽く僕たちは最寄の中華料理店に入った(らしい)。 で。 すると突然…… 気持ち悪くなってきた。 うわっ…………マジで気持ち悪い。 出された途端にそんなセリフを吐くなんて、たたき出されても仕方のないところだが、その店の店員は優しかった。嫌な顔はしていたけど……(という話)。 チャーシュー麺を前に気持ち悪さでグロッキー寸前だった僕は、ついに力尽きかけた(らしい)。 ところが、何がどうしたのか突然ムクッと起き上がり、もくもくとチャーシュー麺をすすり続ける(なんとなくそんな記憶が…)。髪の毛を固めていたディップが染み出したダシはなんとも絶妙で……というほどの記憶もなく、それでも僕は、他の誰も成し遂げられなかったダシまで完食!を果たしたのだった。 途切れ途切れの記憶をつなぎ合わせるとこういうことになるのだが、おそらく実際はもっともっとひどいことになっていたと思われる。知らぬが仏、酔っ払ったもんの勝ち。酔った責任酔わせた責任、あんたに任せた後始末!! ところで。 我々がこの日最後に入った店は「北京飯店」というところだったのだが、なんとこの中華料理屋さんは、日本に北京ダックを広めた伝統の店なのだという。つまり、ここに来て北京ダックを食わずしてなんとする!というお店だったのだ。 |