全長 40cm(写真は3cmほどの幼魚)
その名のとおり、朱いラインでくくられている体色のアカククリ。
ただしこれは幼魚の頃だけで、大きくなるとまったく様相を異にする姿になり、ツバメウオ同様、団扇のような魚になる。
そんな成魚を目にする機会のほうが多く、初めてアカククリという名前に接するのがオトナとの出会い、というケースのほうが多いからだろうか、この名が幼魚の体の色に由来しているということをご存知ではない方が意外に多い。
もっとも、たとえ知っていたとしても、アカククリの幼魚にはそうそう出会えない。
写真のような「幼魚」には、これまでの23年間で2個体しか出会ったことがないほどだ。
それも、どちらも桟橋脇の浅いところ。
流れ流れて、たまたまここに来ちゃいました…という子である。
リーフ斜面の亀裂や岩陰などを丹念に探せばいるのかもしれないけれど、水納島の場合はそもそも成魚自体の数が多くないので、子供だってそこら中にいるというわけにはいかないのだろう。
そのかわり、幼魚ではないけれど赤いラインが残っている若魚なら、これまでにもチラホラと観ている。
これがもう少し成長すると……
だんだん体の黒い部分が消えていき、朱いラインが途切れてくる。
さらに成長すると…
オトナに観られる顔周辺の2本のラインが出てくる(一連の写真は、同一個体ではありません)。
ここまではかろうじて「朱くくり」なんだけど、これがオトナになると……
これだけ見せられて「アカククリ」と聞いても、名の由来など見当もつかないのも無理はない。
ツバメウオのように大群を作ることはないけれど、2匹で仲良くしている姿をちょくちょく見かける。
ただし子供の頃の習性のままだからか、基本的に岩陰が好きらしく、オーバーハングの下などでゆったりしていることが多い。
一方でデンタルケアやスキンケアには余念がなく、御用達のホンソメクリニックにしょっちゅう世話になっている。
ホンソメワケベラなどに長めにクリーニングしてもらっているときのアカククリは、体の色が黒っぽくなる。
どうやら「気持ちいい……」の印らしい。
アカククリ御用達のホンソメクリニックは、付近で暮らしているアカククリが一堂に会することもある。
一人のサスケが…
二人のサスケに…
三人、
四人……
五人、十人!!
…にはならなかった(過去に砂地の深い根で、5匹の群れは観たことがある)。
ともかく、アカククリ御用達のホンソメワケベラは大忙しなのである。
※追記(2021年8月)
近年になって、妙にアカククリのオトナと出会う機会が増えてきた。
それもほとんど同じ場所で、いつ行っても2〜3匹いる。
日によってはこっちに2匹、あっちに2匹…とポコポコいたりする。
やがてそれまで別々に観られたものたちが一堂に会することも増えてきて、アカククリの行進まで観られるようになってきた。
これ以前には6匹が行進していて、それが最多記録だったのだけど、今年(2021年)8月、同じ場所に8匹ものアカククリが集合していた。
残念ながらその様子を捉えた写真は無いものの、このままいけばやがて10匹に到達する日も近いかもしれない。
10匹が行進しているときに、手にしているカメラがマクロレンズではないことを祈ろう。