全長 10cm
ターボスネイル生息密度調査の際は、浅いリーフ上をウロウロする。
そういう環境は、満潮時でもないかぎりタンクを背負ってウロウロするには不向きなので、普段のボートダイビングでは訪れる機会はほとんどない。
もちろんそういう場所はターボスネイルだけが暮らしているわけじゃなく、魚たちもたくさんいるのだけれど、普段訪れる機会があまりないものだから、じっくり腰を据えてお付き合いすることはまずない。
そのため潮が引けば足が立つほどに浅いところであるにもかかわらず、案外(個人的に)未知の魚たちがたくさんいる。
このアカニジベラもそのひとつだった。
満潮時でさえ水深3mほどの浅いリーフ上が主生息域らしく、リーフの外ではまず会うことができない。
会えたとしてもパッと見が地味だから、出会えたヨロコビに胸を震わせるヒトは少ないと思うけれど、ベラベラブダイバー生活のおかげでイナズマベラがわりと身近な存在になった今、よく似たアカニジベラも撮っておかねば…
…と思い立ったまではよかったのだけど、ベラベラブダイバーになっていた2020年11月から2021年の春までの間、彼らアカニジベラが住まう環境を訪れることができたのは数えるほどで、記録に残せたものといえば…
メス。
5cmほどのチビ。
4cmほどのチビターレ…
…と、なかなかオスに出会えない。
いや、出会えてもすぐに遠くに逃げていくから撮れなかっただけだったっけか。
ともかくどんなヘッポコ写真であれ、オスを撮るまではアカニジベラのアップはペンディングだ…
…と決めてから半年以上過ぎた今年(2021年)7月、ついにオスの姿を記録に留めることができた。
しかしこれじゃ、ヒレを閉じてしまってなんとも格好がつかない。
なんとかヒレを開いた瞬間を撮れないものか…とストーカーになること10分ほど、ついにチャンス到来!
ああしかし、そこは物陰なのだった。
ヘッポコ写真ではあるものの、こうしてヒレを開いてもらえると、オスにも背ビレには眼状斑の名残り的黒点があることがわかる。
今回は姿を拝むだけで終わったけれど、産卵の際にはリーフエッジ付近まで来てくれたりするのだろうか?
リーフ上超低空飛行生活のアカニジベラが、中層に躍り上がる……そんなシーンがあるのなら、是非観てみたい。
※追記(2022年5月)
昨秋(2021年)以降の軽石騒動のあおりで、ボートを長期間渡久地港で上架させていた間、絶好の海日和でもボートが無いために、ビーチエントリーで潜ることが多かった。
もっぱらチョウチョウウオ類の稿で紹介しているように、カモメ岩の浜からエントリーすると波打ち際からすぐにパッチ状にサンゴ群落が広がっているから、チョウチョウウオ類の各種幼魚のほか、浅いところを好む様々な魚に会えてけっこう楽しい。
そんな浅いところには、このアカニジベラたちも実にたくさん暮らしていることを知った。
アカニジベラたちが観られるのは、なにもリーフ上だけではなかったのだ。
おかげでヒレ全開の姿を撮ることもできた(冒頭の写真)。
春(2022年)になって、浅場に住むギンポたちの恋模様を覗きに干潮時に出向いた際も、波打ち際にほど近い水深50cmほどの浅い浅いところで、アカニジベラのオスがメスがいるところを巡回しては、ブイブイいわせていた。
もちろん大小各サイズのメスの数も多く、ゴキゲンそうなオスは我が世の春を謳歌しているようだった。
ここらあたりなら、アカニジベラたちの産卵行動もたやすく観られるかもしれない。
でも産卵の時は、さすがにリーフエッジ付近まで出向くのだろうか?