全長 7cm
ハタタテハゼとまったく同じグループの魚ながら、その人気度は月とスッポン、雲と泥、読売ジャイアンツとザスパ草津くらいの違いがある。
< 競技が違うんですけど??
美しさから言えば甲乙つけがたいのになにゆえそこまでアケボノハゼのほうが人気があるかというと、ひとえにアケボノハゼたちのレア度による。
海外では場所によってはアケボノハゼがわりと浅めのところで超インフレ状態ということもあるそうながら、沖縄の場合は基本的に数が少ないうえに住んでいる場所が相当深い。
となるとフツーにダイビングしているとなかなか出会えず、一般人には無縁の魚、妖艶なるその美しさに憧れつつも、庶民には別世界の銀座の女…(ひと昔前かも)というようなものなのである。
なので身の程をわきまえずに深みにはまると、取り返しのつかないことになってしまうから気をつけなければならない。
水納島では彼らが生息するような環境は40mくらいの水深になり、おまけにドロップオフ環境のようにボートからすぐ真下に行けばOKという場所でもない。
そのためそうそう訪れることはないし、必ず会えるというわけでもないのでゲストをご案内することはまずない。
それでもかつては、その姿見たさに何度か訪ねたことがある。
一応ペアでホバリングしてはいるものの……
…やはり個体数が少ないと警戒心は強くなるのか、ハタタテハゼに比べると圧倒的に早く片方(オス)は逃げてしまい、あとにはお腹が膨れたメスが残されるのみ。
あまりの逃げ足の速さに愛想が尽きたのか、アケボノメスは、お相手を換えてしまった……
……というのはウソ。
オグロクロユリハゼはこの近くにいるペアの片割れで、全体を見渡すとこうなっていた。
片方が随分遠くに逃げていることがわかる。
水納島の場合、滅多に会える魚ではないとはいえ、なにはともあれこうして数度会うことができたから、まぁこの先無理して深いところに行く必要もないか……
……と思いきや。
アケボノハゼよりもさらにレアな、シコンハタタテハゼという麗人が世に知られるようになってしまった。
和名がつく以前は変態社会人の間でヘルフリッチという種小名カタカナ表記で親しまれていたこの美しいハゼは、その存在が知られるようになるやいなや、深みにはまったダイバーたちをいっそう深みへと取り込んで離さないのであった。
残念ながら水納島では、まだシコンハタタテハゼは見つけていない。