全長 30cm(写真は3cmほどの幼魚)
今年(2021年)は、秋になるまでコロナ禍に翻弄され続けた沖縄。
ところが、ようやく第5波の収束と言ってもいい状況になってきた10月半ば過ぎになって、今度は軽石騒動が勃発してしまった。
軽石が漂着し始めたばかりの頃は、やがてはそういう事態になるかも…と覚悟しつつも、県内のどこにも経済的物理的被害が出ていなかったからまだまだ気楽なもので、これはハレー彗星級に人生に一度あるかないかの光景かも…なんてワーワー騒いでいたものだった。
そんなおり、ゲストをご案内する1本目のダイビングを終え、そろそろ家に戻ろうか…というタイミングで軽石が溜まっている側の桟橋付け根を見に行ったオタマサが、例によって奇声を発していた。
「オヒョーッ!?」
いったいナニゴトかいな…と桟橋付け根に行ってみると…
桟橋付け根に溜まり始めていた軽石の周辺に、↑このような小魚が密集隊形になって群れ泳いでいた。
これは…
アミモンガラだ!
アミモンガラは幼魚もオトナも外洋性のモンガラで、普段のボートダイビングではまず目にすることができない魚だ。
それでも幼魚は、拠り所にしている流れ藻などとともに桟橋脇まで流されてくることはある。
しかしそこで見られるのはせいぜい1〜2匹程度。
昨年流れ寄ってきた流れ藻集団でソウシハギ・チビターレ祭りになっていたときも、アミモンガラは数えるほどしか見られなかった。
このように水面に1〜2匹でいる時などは、擬態効果を狙ってか、ノラリクラリクネリユラリと何かのフリをしているかのように水面付近に浮いている。
そんなアミモンガラ・チビターレが、まさかの大集団結成だ。
大集団になると、あっちへワラワラこっちへワラワラと、けっこうせわしなく素早く泳ぐ様子が面白い。
こりゃたしかに「オヒョーッ!?」ってなるわ…。
前代未聞のアミモンチビチビ軍団、ひょっとしたら今日この時かぎりかもしれない。
そう思えば予報どおり吹き始めてきた強めの北風や氷雨など気にならなくなるもので、さっそく3点セットとコンデジを引っ提げ、軽石が打ち寄せる波打ち際に突入。
さっそく水中から覗いてみると…
キャーッ!アミモンガラ・チビターレの大集団!!
傍から観ていたら軽石塗れになってなにやってんだろ?ってところだったことだろう。
幸い連絡船は朝から潔く欠航してくれていたおかげで、ビーチには業者も客もほぼほぼヒトッコヒトリーヌ。
ユラユラ浮かんでいる軽石の下には流れ藻が集まっていて、ワタシに追われているアミモンガラは、その流れ藻にも寄り添ってみせる。
とはいえ昨年のソウシハギチビターレ祭りのときもそうだったように、普段流れ藻がこのようにたくさん集まっていても、アミモンガラ・チビターレの大集団なんてまず見られない。
ある種異常な光景である。
どうやら今回の彼らは、洋上を漂う大量軽石軍団を拠り所にしていたようだ。
一塊の軽石集団には1〜2匹しかおらずとも、これほど浜に打ち上げられるくらい大量に漂ってきているのだから、一緒に流れて来るアミモンガラ・チビターレの量だってものすごい数になるはず。
軽石に寄り添っている姿を観ると…
軽石そっくり!
むしろ流れ藻に寄り添っているよりも、色を白っぽく変えたりすることによって遥かにカモフラージュ効果が高そうだ。
アミモンガラの知られざる軽石擬態、ひょっとすると本邦初公開かも??(拙日記にて紹介した10月19日の時点では、間違いなく「初」だったはず)
なにはともあれアミモンガラ大集団、年に1〜2匹見られるかどうかというチビターレだというのにこれほどの数は、ひょっとするとこの先一生分以上見てしまったことになるかもしれない。
白い砂浜を黒く塗り替える軽石軍団から、まさかの贈り物なのだった。
アミモンチビチビ軍団はその後幾分数を減らしつつも引き続き桟橋脇に姿を留めてくれたので、シーズン最終盤にご来島いただいたゲストのみなさんたちにも、貴重な出会いを楽しんでいただけた。
…と、呑気に喜んでいられたのもそれから一週間くらいのことで、ますます深刻の度合いを増していく軽石騒ぎは、ついにうちのボートにまでトラブルを巻き起こす事態に至る。
アミモンチビチビ軍団との出会いはラッキーとは思ってはいるものの、例によって禍福のバランスが禍側に大幅に傾いている海神様の裁量である…。