全長 10cm
普段滅多に行かない砂地の深い根で、見慣れないテンジクダイの仲間を見つけたのは、2010年の梅雨時のことだった。
そこにはその年に限ってどういうわけかアオスジテンジクダイやスミツキアトヒキテンジクダイがやたらと集まっていて、その中にその見慣れないテンジクダイの仲間が、やや肩身が狭そうに数匹混じっていた。
その際撮った写真↑をもとに後刻調べてみると、それはアオハナテンジクダイという魚であることがわかった。
アオスジテンジクダイ、スミツキアトヒキテンジクダイ、そしてこの見慣れぬテンジクダイの仲間はどれもみな、目に青いアイラインが入る。
似ているといえば似ている者同士が集まっていたのだろうか。
とはいえこのアオハナテンジクダイは、青ライン入りの他の2種より細長く見える。
そしてストロボで照らし出されたその体は、微妙なグラデーションが美しい。
ところが、今年(2019年)の春先、アオハナテンジクダイにしてはやけに浅いところにいた数匹はどれも、深い根で目にするものと比べると、やけにあっさりした体色だった。
浅いから?
若いから?
若いとはいえ、ペアになっているものもいて、すでにオスは口の中で卵を保育中だった。
左側の口が膨れているほうが、卵保育中のオス。
そしてメスが、まさに「伴侶」の状態で絶えず寄り添っている。
また、他の個体(メスか?)が近寄ってくると、オスに近づかせないよう果敢に撃退していた。
アオハナテンジクダイに出会えるのは深い根であることが多く、そういうところではなかなか口の中の卵を観るまで粘っていられないのだけれど、このペアたちはフツーの水深に居てくれたので、卵保育中のオスにしばらく注目してみた。
でも、卵の発生段階が進んでいないからか、それとも口のサイズに比して卵の数が少ないからなのか、ずっと観ていてもキンセンイシモチなどのように口の外に卵塊を出して新鮮な水にさらす動作はしてくれず。
オスはまるで、浮気がバレて気まずい言い訳をするオヤジのように、ただただ口をモゴモゴさせるだけだった。
それでもカメラは、モゴモゴするときに少し開く口の中からチラ見えしている卵をしっかり捉えていた。
拡大してみると……
タマタマタマゴ〜〜♪
産卵後間もなそうな卵が、口の中にビッシリ。
3月末、まだ水温は低い低い季節にもかかわらず、アオハナテンジクダイたちは早くも繁殖期を迎えていたのだ。
春先から繁殖期が始まっているくらいだから、GW頃にはチビターレの姿を観ることができる。
この子だけ見るとアオハナテンジクダイだとはにわかには信じがたいところだけど、同じ場所にもう少し大きいチビもいた……
……から、きっと間違いないだろう。
※追記(2021年10月)
上記のような繁殖の甲斐あってのことか、ここ数年は普段よく訪れる砂地の根でも、若魚の集まりが観られるようになってきている。
彼らが順調に成長すれば、アオハナテンジクダイがいるにしては比較的浅い根で、オトナのペアをいつでも観られるようになる日がくるかもしれない。