全長 80cm(推定)
欠航が続く今秋(2022年)、されどお天気はいいので海に行こうという気分になる。
時化が続くこともあってボートは渡久地港に疎開させているため、海といえばビーチエントリーになる。
まったく別の目的で桟橋脇からエントリーし、桟橋沿いに進んでいたところ、水面下30cmほどの岸壁から、異質なほどに白いものが突き出ていた。
ウツボだ!
その白さときたら、まるでサバンナのライオンの群れの中にパンジャの息子レオが混じっているかのごとく尋常ではなかった。
すぐさまカメラを向けたところ、その白いウツボは直ちに身を幾分引っ込めてしまった(冒頭の写真)。
完全に引っ込んでしまう前に…と慌ててもう1枚撮る頃には、ほぼほぼ顔だけ状態。
そしてそのまま引っ込んでしまった。
覗き込むと狭いスペースからこちらをうかがう彼の顔が見えたので、離れてからしばらく待ってみたけれどいっこうに姿を現す気配は無く、その後1時間近く経ってからもう一度訪れてみたものの、引っ込んだきりだった。
初めて撮ったウツボであることはたしかだとは思うけれど、いくらなんでも顔だけで正体を探るのはムツカシイか…
…と半ば諦めつつも後刻PCモニターで写真を見てみたところ、その虹彩部分に模様が入っていることに気がついた。
アデウツボの稿その他で触れているように、ウツボ類は目の虹彩部分の模様で種類を見分けることができるケースもある。
この目の模様を手掛かりに調べてみたところ、このウツボはどうやらアセウツボという種類であるらしいことがわかった。
水納島で四半世紀以上潜っているにもかかわらず初めて目にしたくらいだから、さぞかし珍しいウツボに違いない。
少なくとも収録魚数1248種を誇るヤマケイの「日本の海水魚」(ハンディ図鑑シリーズのほう)には掲載されていなし、同じくヤマケイのどでかい図鑑「日本の海水魚」では、標本写真しか載っていない。
となればレア中のレア…
…かと思いきや、このアセウツボは成長すると1m超とかなり大型のウツボのくせに、極めて浅いところを好む種類だそうで、タイドプールなどでも観られることがあるくらいなのだそうだ。
水中写真が少ないのはそれゆれか…。
そういえば5〜6年前…という感覚ということは10年前かもしれない…、桟橋にボートを横付けしていた時、ちょうど水面付近になっていた桟橋のコンクリートの棚上に、とてつもなく白いウツボがノソッ…と横たわっていて、なんだこれはどしたどした!?と騒いでいるうちにスルスルスルと逃げて行ったことがあったっけ…。
あれもおそらくこのウツボだったのだろう。
この日水面下30cmのところから顔を出していたのも、彼にとってはまことに好都合なねぐらだからこそ、ということだったようだ。
次回全身を晒してくれているチャンスがあれば、どしたどした!?と慌てず騒がず、すぐさまパチリと撮ってしまおう。
※追記(2024年9月)
本文中で紹介している、桟橋の岸壁の棚のところにいたアセウツボ、当時水面越しに写真を撮っていたことを今頃知った(文中では5〜6年前と述べているけれど実際は3年半前のことだった)。
アセウツボが乗っている幅10cmほどの棚はこのとき水面下10cmほどで、いかに彼らが浅いところを好んでいるかがよくわかる。
また、初認識の翌年(2023年)にはオタマサが、同じく桟橋の波打ち際近くのコンクリートの隙間に潜んでいるアセウツボと遭遇している。
顔つきや模様の入り具合いにアダルトっぽさを醸し出しているコイツは、ひょっとすると前年ワタシが出会った若者の成長した姿なのかもしれない。