全長 12cm
チョウチョウウオと聞けば、誰しも「熱帯魚」というイメージを抱きそうなものだけど、意外や意外、このチョウチョウウオは温帯域の海に適応している。伊豆あたりで潜ってもごくごく普通に観られるのだ。
どこで潜っても観られるくらいに数多く、そのうえ名前もチョウチョウウオの上に何も冠せられていないために、彼らはときに「並チョウ」というありがたくない名で呼ばれることもある。
水納島でもとてもとても普通に観られる。
ただし、同じようによく見られるトゲチョウやフウライチョウのようにヒラヒラと活発に泳ぎ回ったりせず、いつもサンゴの下や物陰でペアで仲良く休憩している。
ときにはリーフの上などの中層で、ペアで静止していることもある。
その静かなたたずまいがいい感じなので、ジッとしてくれているのをこれ幸いと近寄ると、すぐにスーッと逃げてしまう。
海域によってはけっこうな数で群れることもあるようだけど、残念ながら水納島でチョウチョウウオの大群は観たことがない。
集団になるのが繁殖行動の一環なのだとしたら、水納島では繁殖様式が異なるということなのか、それとも単に集団になるほど個体数が多くないということなのか…。
※追記(2022年11月)
観たことがないといえば、不思議なことにこのチョウチョウウオ、これまで水納島でチビターレの姿を目にしたことがなかった。
その昔西伊豆大瀬崎で潜っていた頃にはちょこちょこ見かけたというのに、眼状斑つきのチョウチョウウオチビを観たことがないのはなぜだろう?
…と不思議に思っていたところ、今秋(2022年11月)ついに遭遇。
5cmほどだからチビターレというには薹が立っているものの、背ビレ後端にまだ眼状斑を残しているから幼魚は幼魚。
大瀬崎で目にして以来、実におよそ30年ぶりの再会だ。
…と喜んでいたら、一週間と時をおかずにたて続けに2度目が。
しかも3cmほどのチビチビで、さっそく人生最小記録更新だ。
それぞれ別の場所ながらいずれもリーフ内でのことで、これまで1度としてリーフの外で会ったことがないということは、チョウチョウウオのチビたちももっぱらリーフ内が好きってことなのだろうか。
ま、サンプル数が2例だけだと、何が言えるわけでもないけれど。
※追記(2023年10月)
今夏(2023年)のこと、普段よく潜るポイントのリーフ際で、アカマツカサ系が群れているような広めの穴蔵を覗き込もうとしたところ、暗がりのなかからチョウチョウウオが1匹スルッ…と出てきた。
間をおかず、2匹目のチョウチョウウオがスルスル…
ん?
…と首を捻る間もなく、そのあと続けざまにどんどんチョウチョウウオが出てくるではないか。
なんだか今週のビックリドッキリメカ(by ヤッターマン)のよう…。
次々に出てきたチョウチョウウオは都合10匹で、暗がりから出てきた後は左右に分かれてしまったものの…
上記本文でも触れているようにチョウチョウウオの大集団など目にする機会がない水納島では、10匹の団体様でも大した集団で、画面内に6匹いるシーンなんていったら個人的最多記録だ。
今夏は早々に水温が30度に達してしまい、魚たちがウンザリしていたところにZターン台風が大雨を降らせて一気に水温が下がり、そこから再び水温が上がり始めたことが、再びチョウチョウウオの繁殖スイッチを入れることになったのだろうか。
ちなみに上の写真だけ見ると仲良く行進しているように見えるけれど、実際はそれぞれが相手をとっかえひっかえケンカしていて、まるで1匹のメスを巡る争いででもあるかのようだった。
安産量産タイプのモテモテメスのハートをゲットするのは誰だ?的なチョウチョウ王選抜イベントだったりして。
それにしても、10匹も集まって暗がりの中で何をしていたんだろう?