全長 5cm
水納島におけるボートダイビングは、リーフの外で潜るのが基本だ。
そのため、本来は最も身近な海であるはずの礁池内(いわゆるインリーフ、沖縄風に言うとイノー)にしかいない魚と出会う機会が少なくなる。
ルリスズメダイやムラサメモンガラなど、ビーチでおなじみの魚などは、水納島ではダイバーよりもむしろ海水浴客のほうが馴染みがあるはず。
写真のハタタテギンポも、そんな「イノーにしかいない魚」だ。
その名のとおり、背ビレの前部分がピヨーンと長くはためいている。
観られる場所は主にリーフ内の藻場などで、海藻のふりをしながらフラフラユラユラと漂いつつ移動したり、チョンと何かに乗っかっていることが多い。
ただし、目の前にありながらなかなかビーチに潜る機会がないワタシの場合、彼らを目にするのは、桟橋脇に係留している船のロープを手繰り寄せているときなどになる。
ハタタテギンポは、海中に垂れているロープを拠所にして休憩していることもあるのだ。
拠所にしていたロープを奪われたハタタテギンポは、
「私は枯葉……」
のようなポーズで静止したまま、しばし流れに身を任せ、いずこへともなく去っていく。
そんなハタタテギンポをひとつじっくり撮ってみたいと思い、台風で連絡船は欠航しているけれどまださほど海が時化ていない頃を見計らって、普段滅多に入れない連絡船停泊側の桟橋付近に潜ってみた。
すると、桟橋の壁に、チョンと載っている彼の姿が。
素早くすばしこく逃げ去ったりすることはなく、実にいい子ちゃんのままいてくれたので、チョンと乗っている姿は無事撮ることができたのだった。
ところでこのハタタテギンポ、今まで気づかなかったことがひとつ。
これを書いている今、拡大した写真を見て気がついた。
ハタタテギンポって……
…目がハート♪