全長 10cm
キリンミノと同じくヒメヤマノカミ属になるヒレボシミノカサゴは、寄生虫が体側に複数ついていることからも推察できるように、わりとジッとして動かないタイプだ。
オトナの背ビレの後ろには、その名のとおり大きな星が2つ入っているし、口先から伸びる皮弁が前に伸長しているあたりも随分特徴的だから、他と見分けるのは簡単。
ただしヒトが入り込めないようなちょっとした岩陰の裏側といった、目につきにくいところでジッとしているものだから、居たとしても気づけない場合もある。
だからなのか、そもそも我々のサーチ能力のモンダイなのか、根本的に水納島では個体数が少ないのか、これまでの25シーズン(2019年現在)で出会ったことがあるのは、たった2個体のみ。
最初の1個体目こそ、しばらく同じところに居続けてくれたから何度か観ることができたけれど、次の2個体目に出会えたのは、それから15年後のことになる。
15年ぶり2度目だなんて、久しぶりにヒット曲に巡りあえて紅白歌合戦に出場する一発屋の演歌歌手なみだ。
あいにくゲストをご案内中だったから、本来なら写真など撮っていられないところだった。
ところがこのすぐ近くに、これまた珍しいタテスジハタ・チビターレがいてくれたおかげで、ゲストがそちらにカメラを向けておられる間に、ポッケからコンデジを取り出すチャンスが訪れたのだった。
ありがとう、タテスジハタ・チビターレ。
もっとも、だからといってこの際とばかりにいろんな角度から好き放題パシャパシャ撮っていられるはずもなく、この真横からの写真のみ。
特徴的な口先のヒゲヒゲを、正面もしくは上から撮っておきたかったなぁ…。
目の上の皮弁はさほど発達しないかわりに、なぜだか口からビヨヨンと前に伸びるこの皮弁は、上からみると八の字に広がっていて、なんだかとぼけた魅力があるのだ。
真上から撮ったわけではないものの、かろうじてヒゲヒゲが2本見えるファーストコンタクト時に撮ったポジフィルムを発見した。
他の仲間はみんな目の上にピヨンと伸びるのに、なんでヒレボシミノカサゴだけ前に突き出ているんだろう?
魅力といえば、ネット上で散見される幼魚がまた、オトナとまったく違っていて実にカワイイ。
そんなのが砂地の上に居いようものなら、狂喜乱舞に欣喜雀躍、出前迅速落書無用、ゲストなどかなぐり捨てて写真を撮ってしまうことだろう。
かなぐり捨てられるかもしれないゲストのみなさん、今のうちからお詫び申し上げます。
逆に、一緒に潜っていたにもかかわらず、サラリと写真だけ撮ってワタシには教えてくれず、後刻「こんなの居ましたねぇ…」なんて写真だけ見せられりしたら、お命頂戴いたします。