全長 50cm
90年代になってようやく和名がつき、一般に知られるようになったヒレオビウツボ。
とんでもなく珍しいわけでも、極端に深いところ、浅いところにいるわけでもないのに、どうしてそれまで知られていなかったのか。
実はこのヒレオビちゃん、とってもシャイなのだ。
おまけにわりと小さなウツボだから、長い間人目につかなかったらしい。
水納島で見かけるのは砂地の根で、物陰のような暗いところから、冒頭の写真のようにひっそりと顔を出している。
ただし、おっ、ヒレオビウツボだ、と思ってゲストにご覧いただこうとすると、スーッと引っ込んでしまう。
そのためゲストが覗き込んだ頃には、せいぜい↑これくらい顔を出してくれているのが関の山、ということが多い。
そんなウツボだから、ゲストの記憶に残ることはほとんどないといっていい。
ただ、いつもは控えめな顔つきをしているヒレオビウツボなのに、どういうわけかとてつもなく凶相になっていたことがあった。
さすがウツボの仲間、やる時はやるのだ。
この時はなにやら深呼吸を何度も繰り返していて、これは咽喉を膨らませている状態。
咽喉を閉じると……
どっちの顔も、普段の表情に比べるとかなりの印象派。
その口、いったいどこまで開くんでしょう??
いやはや、こんな顔に出会ったら、どんなに忘れっぽい方でもさすがに記憶にとどめてくださることだろう。
ヒレオビウツボを見かけるときはたいてい単独でいるけれど、一度だけ仲良く2匹でいるところに出会ったことがある。
ペアでいるときは、メスに対してオスがカッコイイところを見せようと、強気に雄々しく体を露出して……
…いるはずはなく、ペアでいてもやはりいつものように、静かにひっそりしていた。
うん、地味ながらも、このほうがよっぽどヒレオビウツボらしい。
※追記(2021年10月)
そんな引っ込み思案なヒレオビウツボが、珍しく身を乗り出していたことがある。
ヒレオビウツボのくせに、カメラに向かって牙を剥くほどなにやら血気盛んだ。
もっとも、注目するとすぐさまヒュルヒュルヒュルと穴の中に身を隠してしまう…
…かと思いきや、観ていると、
さらに身を乗り出してきた。
いったいぜんたい、その視線の先には何が??
あ。
キンメモドキが群れていた。
ヒレオビウツボのポテンシャルではキンメモドキを素早くゲットなどできそうには思えないのに、思わず身を乗り出すってのは、やっぱり本能的に「血が騒ぐ」ってことなのだろうか。
たしかにこんだけ御馳走が群れていたら、そりゃ舞い上がっちゃうわなぁ…。