全長 40cm(写真は10cmほどの若魚)
マダラタルミはチビターレ時代に、クネクネクネクネとまるでアジアコショウダイのチビのように泳ぐものだから、てっきりコショウダイ類に近縁なのだとばかり思っていた。
ところがコショウダイ類がイサキ科なのに対し、マダラタルミはフエダイ科に属するマダラタルミ属のメンバーの1人だった。
マダラタルミ属にはもう1種いて、それがこのホホスジタルミだ。
マダラタルミにしてもホホスジタルミにしても、なんだか目の下や頬のたるみが無残になっている疲れたオヤジのような語感があるけれど、「タルミ」というのは紀伊半島あたりでのフエダイ類の地方名らしい。
もっとも、マダラタルミ同様このホホスジタルミも分布の中心は沖縄よりも遥かに南洋で、沖縄本島あたりになるとマダラタルミよりもさらに希少な魚になる。
そのためこれまで出会った回数は、指を折って数える薄幸のサチコの幸せの数よりも少ない。
サンプル数は極小ながら、ホホスジタルミのチビはマダラタルミとはひと味違っていた。
小さい頃のマダラタルミは白黒の体をクネクネさせることで目立つのに対し、同じ白黒でもこのホホスジタルミはクネクネ派ではなく、カッコよくシャープに伸びた長い腹ビレや背ビレでやけに目立つ。
この長いヒレは成長とともにその特徴を失っていき、オトナになるとマダラタルミとほとんど変わらぬ不発弾色になってしまう。
なので、どうせならより小さな頃に出会いたい。
これまでの個人的最少記録は2cmほどのチビターレだ。
これくらいのチビがウミシダなどに寄り添っているシーンに出会えば、今ならアドレナリン噴出間違いなし。
ところがこのフィルム写真を撮ったのは水納島に越してきてからまだ数年くらいのことで、まさかその後こんなに出会えない魚だとは思ってもいなかったのか、残された写真からはこのチビがなにに寄り添っていたかすらわからないし、そもそもそれほどの枚数を撮っていなかったりする。
その後ゲストをご案内中に1度か2度出会ったことがあるような気もするけれどいずれもゲストをご案内中のことで、カメラを手にしている時に出会った2cmサイズといえば、結局今のところこの時が最初で最後になってしまっている。
冒頭の写真は2016年のものながら、すでに8cmくらいに育っているから、「幼魚」というにはかなり薹が立っている。
まだ腹ビレはビヨヨンと長いけれど、ヒレを閉じて泳いでる姿は……
近い将来の成長した姿を彷彿させる。
この若魚と出会ったのは8月のことだったから、冬を越したチビチビということなのだろうか。
前年の秋〜冬にここで遭遇していれば、超久しぶりのホホスジタルミ・チビターレだったかもしれない……。