全長 10cm(写真は3cmほどの幼魚)
昨年(2018年)秋のこと。
ゲストを案内中に出会ったヨコシマニセモチノウオ(この魚も「珍」)を撮るべく、10日後に再訪してみた。
10日も経っていたらさすがに居なくなっているだろうと諦観していたところ、なんとなんとヨコシマニセモチノウオは健在。
パシャパシャ撮って早々に目的を果たせたので、ホクホクしつつさらなる深みを探訪してみた。
滅多に行かないポイントのおいそれとは近づけない深いところで、窒素の酔い心地もいい感じになってきた頃、見慣れないベラに出会った。
これまで観たことがないベラだ!!
と瞬時に判断したものの、そもそも窒素でゴキゲンになっているからその判断が正しいのかどうか疑わしい。
いやいや、窒素のいかんにかかわらず、ワタシのすべてのセンサーが、人生初遭遇であると信号を発している。
< それが一番疑わしい。
ともかくもパシャ!
地味といえば限りなく地味ながら、大きな特徴である頬(?)の黒斑は、まぎれもなくホクロキュウセンそのヒトである。
沖縄近海は彼らの主分布域には入っていないため、沖縄で観られるホクロキュウセンといえば、せいぜい八重山の海の深いところでひっそりと暮らしている程度らしい。
となると、本島近辺ならいっそうレアなはず。
やはりワタシの人生初遭遇センサーは正しかった。
この写真のホクロキュウセンはいわゆるオス相で、図鑑的にはオス相を呈しているものはけっこう大きくなるという話なのに、この子はオスの姿になりつつも、まだ10cmほどでしかなかった。
その周辺に己1匹しかいないと、いつまでもメスでいる必要がないということなのだろう。
いずれにしても、超レアなベラ。これが人生最初で最後の出会いになるだろう……
…と思いきや。
梅雨も明けていよいよ夏本番を迎えた今年(2019年)6月末、まさかの再会を果たしてしまった。
ホクロキュウセンの若い若いメスもしくは幼魚。
それも砂地のポイントの、しかもフツーにファンダイビングで訪れることができる水深で。
初遭遇までに24年かかったというのに、さほど間を置かずもう2個体目。
これはひょっとして温暖化が進み、ホクロキュウセンの分布域がジワジワと北上しているってことなのだろうか。
いずれにしてもやはりこの子1匹のみで、周りに仲間は誰もいなかった。
そんな状況でもスクスク育つことができるのだろうか。それともあえなく若い生命を散らせてしまうことになるのだろうか。
このチビのその後の様子をチェックしたいところだったのだけど。
あいにくこの根は水深は通常の範囲でも普段あまり訪れない場所なので、その後何度か訪れてはいるものの、その都度この魚の存在を忘れてしまっており、今度こそ、とチェック目的で訪れた頃には、すっかり過去のヒトになってしまっていたのだった。
はたして3度目の出会いはあるか。
昨年、今年と立て続けに出会ったとはいえ、25シーズンでたったの2個体。
まぎれもなくその「珍」度は……
※「珍」マークは3つが最上級です