水納島の魚たち

ホシエビス

全長 12cm

 ニジエビステリエビス、それにアヤメエビスなど、わりとスマートな体形の〇〇エビスと名がつく魚たちは、どれもみな体に白い線(もしくは点線)が入っているもの…

 …と思っていた。

 なので、今春(2022年)岩場のポイントの入り組んだリーフ際のオーバーハングの暗がりで、1人で寂し気に潜んでいる〇〇エビス系の魚と出会ったときには戸惑った。

 体に白線が無い?

 あれ?……スマートな〇〇エビス系にそんなのいたっけ?

 まさかトガリエビス系のどれかのチビってわけじゃなし、存在を気に掛けたことなど一度もない系のヒトかも。

 ひょっとして、珍し系?

 であればすぐさま調べれば良さそうなモノながら、夏が終わるまですっかり忘れていた。

 9月の長引く台風のおかげで過去写真を振り返っていたところ再発見、さっそく調べてみたところ、どうやらこの魚はホシエビスという種類のようだ。

 釣りの世界ではお馴染みの魚のようで、画像検索してみると釣果の写真のオンパレード。

 かろうじて水槽写真はあるものの、海の中で撮られた写真はほとんど世に出回っていない。

 これじゃあ図鑑でもネット上でも見覚えが無かったのも無理はない。

 特徴的な特徴が無いという不思議な特徴のおかげで認識することができたホシエビスは、オーバーハングの暗がりの岩肌に多数ある個室スペースにヒョコ…と1匹で潜んでいるだけだったところをみても、マツカサウオなどのように多数で群れているわけではなさそうだ。

 でもネット上で見受けられる数少ない海中写真の説明によれば、同じように浅いところでフツーに観られるらしい。

 だからこそ釣果の写真がたくさんある、ということなのだろう。

 かなりフツーにいるにもかかわらず、海中写真だけはレアな夜の帝王、それがホシエビスなのである。