全長 15cm
アヤメエビスとは違い、このテリエビスは、存在自体には随分前から気がついていた。
ただ、警戒心が強く、日中はいつもいつもちょっとした岩陰の、さらにその奥に個室のようなところに潜んでいるから、ライトを当てているわけでもないのに覗き見るとすぐに個室に逃げてしまい、その入り口からそっとこちらを伺うだけになってしまう。
なのでなかなかお近づきになるチャンスはないまま、その模様といい、手元の図鑑のニジエビスの項で説明されている、
「日中は単独で岩陰に潜んでいる」
という生態解説にビンゴ!なところといい、もはや疑う余地はない。
この魚は「ニジエビス」である。
……と思い込んでしまっていた。
だからこそ、いつも砂地の根の表に昼間からフツーにニジエビスが群れているのがなんとも不思議だったのだ。
でもどうやらニジエビスは、信じた図鑑の記述とは違い、本来そういう習性らしい。
ではこの個室からチラ見エビスは誰エビス??
調べてみると、どうやらこの子はテリエビスのようだ。
テリエビスという名前は知っていたのだけれど、「照り」というその名から、勝手にウケグチイットウダイ的なメタリックな色味の魚だと思い込んでいたワタシ…。
いったいこの魚のどこがどうテリなのか、ともかくも正体はテリエビスだとわかった。
ただしわかったからといって、いきなり彼らが警戒心を解いてくれるはずもなし、いまだにちょっとした岩陰の奥でチラ見え程度のお付き合いしかさせてもらっていない。
その様子は、かつて参考にした図鑑の著者がニジエビスの項で記載していたとおり。
今にして思えば、その図鑑の著者はニジエビスと本種を勘違いしていたんじゃなかろうか…。